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「お金より自由な時間がある方が僕は嬉しいです」〜福島市移住者インタビューVol.3 遠藤優太さん
茂庭の空き家改装シェアハウスに山口県から移住、「山奥ニート」生活をスタート
「山奥ニート」という言葉をご存じでしょうか。時間に追われる仕事中心の生活を離れ、なるべく働かずに山奥で月数万円で暮らす若者のライフスタイルのことで、和歌山県の限界集落で廃校小学校を改装したシェアハウス「共生舎」に住む石井あらたさんが書いた『「山奥ニート」やってます。』(光文社刊)という本が話題になりました。限界集落、高齢化、空き家問題など多くの課題を抱える過疎地域の新たな活路として注目を集め、「世界一受けたい授業」「クローズアップ現代」「おはよう日本」などのTV番組や雑誌「日経ビジネス」などメディアに多数取り上げられています。
そしてここ福島市にも「山奥ニートスポット」があります。福島市が誇る清流が流れる風光明媚な茂庭地区の空き家を改装した「ひきこもりハウス」です。運営するのは伊達市保原町に住む大工・横山真吾さん(35歳)。石井さんの本を読んで感銘を受け、自分も若者を受け入れるシェアハウスを運営してみたいと茂庭の空き家を購入、休みの日を使って改装を行いSNSで告知したところ、全国から若者が集まりあっという間に8室が満室になったとのこと。
福島市移住者インタビュー第三回は、その中の一人、遠藤優太さん(23歳)。山口県の大学を出てすぐにシェアハウスに移り住み、アルバイトをしながら自由な時間を楽しんでいるという遠藤さんに、近くにある「摺上川ダム」にてお話を伺いました。(聞き手・文 熊坂仁美 / 福島市観光ノート編集長)
SNSで部屋を見つけてすぐに移住
熊坂:遠藤さんは大学を出てすぐにここに来られたんですか。
遠藤さん:はい、卒業したあと特にやることもなかったし、ちょうどこのシェアハウスがオープンしたところだったので、面白そうだなと思って来ました。
熊坂:就活はしなかったのですか。
遠藤さん:一応就活もしたんですが、コロナ禍で厳しかったということもあったし、就職する前に日本一周とか、何かもっと大きいことを色々やりたいという気持ちもあったし、そもそも正社員というものにいいイメージがなくて、就活に集中できなくてうまく行かなかったんです。
熊坂:このシェアハウスはどうやって知ったのですか。
遠藤さん:「ディスコード」というアプリの中に「山奥ニート」の本を書いた石井あらたさんが主宰する「遁世主義者の集い」というSNSがあるんですが、そこに各地のシェアハウスの情報が出ていて見つけました。
熊坂:「遁世(とんせい=隠棲して世間の煩わしさから離れること)」ってすごい言葉ですね。
遠藤さん:確かにちょっと宗教くさいけど(笑)、宗教というわけではないです。
熊坂:どんな方たちがいるんですか。
遠藤さん:一般社会に疲れた人たち、という感じでしょうか。700人ぐらいはいるんじゃないかな。(注:5月21日現在894名)
熊坂:でも遠藤さんの場合は、大学を出たばかりですよね。
遠藤さん:僕の場合は正社員になりたくないと思っているので、ちょっとそれに近いものがあるかと。
熊坂:なぜ正社員になりたくないのですか。
遠藤さん:僕はお金より時間のほうが嬉しいと思う方なので。正社員でも、週五日勤務だけでなく、週三とか四でも働ける会社があったら、もっと人は集まるんじゃないかなと思います。
熊坂:そういう会社もあるにはありますが、まだまだ少ないのは確かですね。遠藤さんは空いた時間は何をしているんですか。
遠藤さん:のんびりしてます。たまにシェアハウス内でボードゲームをしたり、わいわいしたりしてますけど。
「月6万あれば生活できる」
熊坂:シェアハウスのオーナーの横山さんに先日お話を伺ったら、中田敦彦さんの「YouTube大学」で石井あらたさんの「山奥ニート」を取り上げている動画を見て来た人がすごく多いとおっしゃっていました。遠藤さんもそうですか。
遠藤さん:それも見ましたし、石井さんの本も読みましたけど、僕の場合は京大卒のニート「Pha(ファ)」さんという方に影響を受けました。山奥ではないですけど「ギークハウス」というシェアハウスを始めたニートの元祖みたいな方です。大学2年の時ドキュメンタリーをYouTubeで見て、こういう暮らし方があるんだなあって。
熊坂:ずいぶん前のことなんですね。
遠藤さん:就活の時に、周りはみんな真剣で、正社員にならなきゃ死ぬ、みたいな感じになっていて、何か違うんじゃないかと。その時にPhaさんの考え方の影響があったかもしれないです。まあ、周りから見たら変わり者だと思います(笑)
熊坂:親御さんは心配したりしませんか。
遠藤さん:親には結構言われましたけど、自分の人生なので。でも自立はしなければならないので、なるべく家賃が安いところを探したらここが一番よかったんです。オーナーが大工さんなので、部屋がしっかりしていて。他のシェアハウスでは、部屋の間仕切りが薄い板だったりするところもあると聞いていたので。
熊坂:確かに、プロがリフォームしている家ですから安心ですよね。今はどんな生活をされているのですか。
遠藤さん:週に3回ほどアルバイトをしています。色々やってみて、僕は家賃を含めて月に6万あれば食べていけることがわかったんです。ただ、今仕事が少なすぎてアルバイト探すのが大変で。居酒屋さんも営業していないし。
熊坂:今は厳しそうですね。できれば地元の茂庭や飯坂地域で仕事があればいいですね。
遠藤さん:この辺りは結構一生懸命探したんですけど、ほんとにないんです。だから福島市まで自転車で通ってます。
熊坂:自転車だと市内までは相当遠いですよね。果物の収穫の季節になったら地元で仕事はたくさんあるかもしれません。
遠藤さん:そうだといいです。仕事だけじゃなくていろんな面でこの地域に関わりたいなと思っています。
歩いていると地元の人が車に乗せてくれる
熊坂:福島の印象はいかがですか。
遠藤さん:この地域の人は優しいなと思いました。バイト面接の帰りに歩いていたら、車で通りかかった近所のおばあちゃんが「乗ってく?」って声かけてくれたんです。ある時はヒッチハイクみたいに手を挙げたら、戻って来てくれて乗せてくれたり。面白いなあと思いました。あと、自分はロードバイクが好きなんですが、ここは景色がきれいで走るには最高の場所ですね。引っ越してきた時には寒くて驚きましたが。
熊坂:ずっと西にいらっしゃったんですもんね。今年の冬から春にかけては特別に寒かったので、いつもこうだと思わないでください(笑)。「湯めぐりパスポート」(一定条件を満たした移住者に渡される三温泉フリーパス)は使いましたか。
遠藤さん:自分は車がなくて自転車なので、近くの飯坂温泉でしかまだ使ってません。でも「鯖湖湯」は僕には無理でした(注:鯖湖湯は源泉のままの熱いお湯で知られる公衆浴場。その熱さがいいというファンも多い)。
「波来湯」の方は利用させてもらっています。パスポートはシェアハウスでも持っているのは僕だけで、うらやましがられてます。審査基準をもっとゆるくしてもらえると、みんな使えるのになと思います。
熊坂:市役所にお願いしてみましょうか(笑)。遠藤さんロードバイクをされるなら、「磐梯吾妻スカイライン」を使って浄土平に行かれて、帰りに高湯温泉や土湯温泉に入るといいかもしれませんよ。ロードバイクの方の人気コースですので。
遠藤さん:それ知りませんでした。行ってみたいです。
熊坂:今後ここでやりたいことはありますか。
遠藤さん:「飯坂けんか祭り」は興味あります。見に行きたいし、できれば山車を担いで参加したいなと思ってます。あと、飯坂町の名物の「円盤餃子」とかもまだ食べてないので、これから名物も色々食べてみたいです。
熊坂:ぜひ、福島ライフを楽しんでくださいね。
<移住者インタビューその他の記事>
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「移住前は、周りに受け入れてもらえるかどうかが一番心配でした」〜福島市移住者インタビューVol.2 菊地俊作さん・由美さん
– 福島市移住支援サイト「ふくがましまし ふくしまし」
https://www.city.fukushima.fukushima.jp/ijyuu/
-福島市の移住・定住支援
https://www.city.fukushima.fukushima.jp/kurashi/teijyu/index.html
-「移住者必見!湯めぐりパスポート
https://www.city.fukushima.fukushima.jp/tkoryu-deai/kurashi/ijyuuteijyuu/onsenpass.html