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震災後に造園業から転身。ふるさと納税を媒体に「べにこはく」ジュースを製造販売【ふくしま果樹園】

福島市でオンライン販売に取り組む事業者特集 Vol.4

少しずつ復調してきたものの、まだ先の見えない飲食や観光などの地域密着型オフラインビジネス。福島市観光ノートでは、その状況を乗り越えようと、地域産品のオンライン販売に取り組む事業者様を特集しています。

【vol.1】「パイの奪い合いではない」新たな販路に挑戦〜ふるさと納税返礼品事業者【株式会社幸青果(みゆき)様】

【vol.2】朝ドラを機に「三方よし」精神で地元事業者の販路を開拓【エールギフト西形商店】

【vol.3】「カレーをコミュニケーションに」3つのスタイルでカレーを提供する【笑夢(えむ)】

第四弾は、福島市産の林檎「べにこはく」等を使ったジュースを販売している、ふくしま果樹園(Next・creation)藤倉克樹さんへのインタビューをお届けします。

ふるさと納税を媒体に、県外へ発信したい

— まずはじめに、この活動のきっかけとなった東日本大震災当時のお話から伺いました。

20代半ばで起きた東日本大震災震災が、とにかく衝撃でした。

造園の仕事をメインでしていたのですが、熱い気持ちで造ってきた庭を、伐採しなければならない。庭師といいながら、庭を壊す日々。もう、庭師はできないと思いました。造園を続けるために別の仕事も掛け持ちしていたのに…当時は、燃え尽き症候群のような状態になりました。

贈答用果物のキャンセルFAXの山

そこから何とか立ち上がろうとしていた時に、尊敬する存在だった農家の方々が風評被害に苦しめられていることを耳にしました。震災直後に贈答用果物のキャンセルFAXが山になっていた話も思い出しました。何かしたいと思い、3年程前から同世代の仲間と活動を始め、コロナの影響もありいよいよ本格的に着手しました。

農家の想い BENIKOHAKU(ふるさと納税)

ふくしま果樹園(BASE)※2022年4月現在 出品停止中

サイトはふるさと納税とBASEがありますが、BASEはあくまで地元の方に知ってもらうための手段と考えています。一番は、ふるさと納税を媒体にした県外への発信です。

「べにこはく」との出会い

ある時、農家さんから「これでやってみたら、面白いんじゃないか」と紹介された林檎が「べにこはく」でした。初代が「べにこはく」の虜になり、周りがどんどん栽培をやめていく中でも「これは良い林檎だ」と育て続けていたんです。今、べにこはくの農家は専属ですが、ここから派生して周りの農家から声がかかり、さらに他の事業者も興味をもって参入してくれたらと思っています。

市内在住で、地元の林檎「べにこはく」を知っている人は残念ながら少ないです。せっかく地元でつくっている林檎なので、是非知って欲しいですね。

平成22年頃から「福島県内18農家・福島市内6農家」によって試験栽培され平成26年に育成が完了。その後、外観が濃い紅色で果肉には琥珀色の蜜が多く入ることから、読みやすく柔らかい印象を持ってもらうため平仮名で「べにこはく」と命名されました。

差別化をはかるための「糖度表記」

りんごジュースは、品種ごとにかなり味わいが違います。さらに、瓶内熟成すると味が変わります。作ったばかりだと味が青いんですね。これは、缶でも同じです。

サンふじは、差別化を図るために「糖度表記」をしました。ジュースでは珍しいと思います。しかも、糖度とは書いていません。「16.5って何?」と興味を持ってもらいたいんです。「ロクジカ」を片仮名にしているのも、同じ理由です。

差別化をしないと、他の産地に負けてしまう

例えば、「べにこはく」と「サンふじ」は収穫時期が重なるので、贈答用で同梱の2本セットにすれば良い。単品で勝負できないのだとしたら、バリエーションで勝負する。お客様に選択肢を与える、ということが必要だと思います。

ジュースを飲んで美味しいと思ってもらえたら、生食でも食べてもらいたいですね。農家にとっては、販路拡大になるかもしれません。

福島はりんごを育てる立地がともなっていて、花の時期から実の収穫までベストマッチしています。「味だけ追求したら福島なんだよ」というのを伝えたいですね。

最終的には「世界に出していきたい」と語る藤倉さん。ご自身でデザインを手掛けるラベルの4つの林檎には、福島市・福島県・日本・世界が描かれています。

「農家の想い」や概念を、一緒に売る

農家の方々はやることが本当にたくさんあるので、農家に6次化を推奨するのは厳しいと思います。さらに、台風などの自然災害で一番被害を受けるのは、一次産業です。

僕は、農家が手塩にかけて育てた農作物を、なるべくいいかたちで畑からなくすお手伝いをしたい。余ったものを自分で畑に埋めなければいけない、こんな苦痛はないと思います。

震災以降、「意味があるものを購入したい」という消費マインドが育ってきましたよね。それであれば、しっかり「意味」をのせましょう、と。その部分は農家さんとかなり話をしました。

高いものを、安く売る必要はない

僕のように、間に入る人(コンシェルジュのような役割)、出口をつくる人が必要です。なぜ周りにあまりいないのか、不思議なぐらい。きっと、儲からないと思っているのでしょうね。

僕は、ネットショップで安く売る活動をしているわけではありません。ネット上に、安いものはいくらでもあります。価格で勝負しちゃダメなんです。

ただ単にジュースを売っているのではなく、「農家の想い」や概念を一緒に売りたいと思っています。

じっくり混ぜ合わせると、ピンクグレープフルーツのような色になる「BENIKOHAKU」すっきりとした酸味が余韻として残ります。

教育は宝。教育できる相手がいることは、それ以上の宝

この活動は、できれば若い世代に興味を持ってもらいたいと思っています。ジュースの中身ではなく、できあがるまでの中身に着目して欲しいですね。

ジュースは、加工場に直接行って自分で作っています。そこへ、一緒に活動している株式会社LOOPの丹治さんや若いスタッフも連れて行きます。みんな興味を持ってくれますよ。

せっかく発車してアクセルを踏んだんだから、ちゃんと次の世代に残していきたいです。そのためには、より良いかたちで伝えていかなければと思います。

アウトプットができる人を増やしていきたい

インプットはできてもアウトプットができないという人も多いと感じます。

時間はどれだけかかっても良いんです。自分だって、これをかたちにするのに10年ぐらいかかっています。言ったことはやらなきゃいけない、そう自分に思わせるスタンスが大切だと思います。

お話を伺った、ふくしま果樹園(Next・creation)の藤倉克樹さん。

新たな、次の価値を創造する

今後の展望

お酒とコラボして、アップルやピーチフレーバーの日本酒をワインのようなかたちで出してみたいです。人気のある近くのショットバーで提供してもらい、空瓶も並べてもらえると嬉しいですね。

林檎だけでなく梨でもジュースを作っていますが、桃や姫りんご(種付用にしか使われない、あんず飴に使われるサイズのもの)はジャムやコンフィチュールにしてみたいです。

その他には、福島明成高校で作った果物でジュースを作ってみたいという想いがあります。今の時代、果物を育てて売るだけでは、なかなか厳しい。こういうアウトプットもあるんだよ、ということを教えたいです。

ジュースを売りたいわけではなく、この活動そのものを推したいんです。焦らず、ゆっくりゆっくり広げていきたいと思います。

藤倉さんが取材の最後に口にした「志がないものを、お金にしてはいけない」というメッセージや次世代への強い想い。経営者は教育者であることを再認識し、これからの取り組みがますます楽しみになるお話でした。ぜひ一度、「農家の想い」をじっくり味わってみてくださいね。

(取材/文:三廻部 麻衣)

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