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朝ドラを機に「三方よし」精神で地元事業者の販路を開拓【エールギフト西形商店】
福島市でオンライン販売に取り組む事業者特集 Vol.2
少しずつ復調してきたものの、まだ先の見えない飲食や観光などの地域密着型オフラインビジネス。福島市観光ノートでは、その状況を乗り越えようと、地域産品のオンライン販売に取り組む事業者様を特集しています。
「パイの奪い合いではない」新たな販路に挑戦〜ふるさと納税返礼品事業者【株式会社幸青果(みゆき)様】 福島市でオンライン販売に取り組む事業者特集 Vol.1
第二弾は、福島のお土産と朝ドラ「エール」オリジナルグッズですべての方々を応援する「エールギフト西形商店」をご紹介します。
一番人気は、素朴で懐かしい日常の駄菓子
福島の銘菓を中心にさまざまなアイテムを扱っているエールギフト西形商店。先月はどのような商品が人気だったのでしょうか。
【エールギフト西形商店 2月の売上ランキング】
1 太陽堂むぎせんべい
2 柏屋薄皮饅頭
3 岩代屋敷大王いもくり佐太郎
4 菊屋伝統「最中」詰め合わせ
5 古関裕而からのエール 入場引換券
一番人気は「太陽堂むぎせんべい」。幅広い地域からコンスタントに注文が入り、「懐かしい」「昔よく食べました」などの感想が寄せられリピーターも多いそう。太陽堂は公式Twitterのフォロワーが15,000人、事業者自らの発信も強みのようです。
エールギフト西形商店のはじまり
エールギフト西形商店を運営する「合同会社マーチングfromふくしま」の西形吉和さんにお話を伺いました。
— ネットショップの開設に至った経緯を教えてください。
元々は、古関裕而記念館の周辺に土産物を買える場所をつくり、そこへオンラインもプラスして、という予定でした。コロナの影響でリアルな店舗のオープンが難しくなったため、昨年5月にネットショップを開設することになりました。ちょうど、「ユージの応援歌」福島×世田谷コラボキャンディができたタイミングでしたね。
▶この可愛らしいキャンディにこめられた想いやストーリーは、こちらから。
ものづくりは、ひとりでは出来ない
福島と豊橋の縁を、何らかのかたちで残したい
—西形さんはご自身もオリジナル商品の開発に携わっていますが、「ユージの絆」はどのようにして生まれたのでしょうか。
朝ドラ「エール」で繋がった福島と豊橋の縁をかたちにして、日常の中でずっと意識して欲しい。そんな思いがあり、昔からお世話になっていた市内の「内池醸造」さんと一緒に商品開発が始まりました。朝ドラ放送中に発売ができれば良かったのですが、なかなか味が定まらなかったんですね。
最初は納豆のタレをつくろうとしたのですが、名だたる醸造屋が今まで何回も跳ね返されてきた高い壁があって。納豆を消そうとするとタレの味が強くなり、タレの味が薄いと納豆が勝ってしまう…その絶妙なバランスが非常に難しく、1回目の方向転換をしました。
そして、豊橋の八丁味噌(発祥は隣の岡崎市)と、福島で作った醤油をベースに「万能ダレ」をつくることになったんです。ただ、味噌と醤油なので、塩っぱくて茶色い。ここで内池醸造さんから「川俣シャモのブイヨン」と豊橋名産の「青じそ風味」というアイデアが出てきました。内池さんは、OEMでレストラン専用のタレなどを開発されていて、いろんなサンプルがあるんですね。
事業者単体での商品開発はハードルが高いですが、コラボをすることで商品化の可能性が見えてくると実感しました。
エールギフト西形商店では、オリジナル商品「ユージの応援歌」「ユージの絆」の他にも、さまざまなエール関連商品を取り扱っています。
— ネットショップは、普段どのように広報しているのでしょうか。
基本的には、SNSでの発信ですね。自分の予定に合わせて、広報をするようにしています。露出を増やすと、注文数も増える。効果がわかりやすく、とても面白いです。サイトも独力で作成していますが、見せ方次第でだいぶ変わってくるなと思います。
— 利用者の特性などを教えてください。
女性の利用者が多く、贈答利用(ギフト需要)もあります。送料無料キャンペーンの月は200件以上の注文がありました。送料無料は、やはり強いですね。
地元事業者の販路を広げるお手伝いを
— ネットショップを運営していて、特にやりがいを感じるのはどんな時でしょうか。
地元事業者さんの役に立っている、と感じられた時ですね。先日、「色鉛筆 ふくしまのいろ」がとあるTwitterで広まり、(半年で2箱の注文だったところ)3日で10箱の注文が入りました。一見、高額と思われるものでも、しっかり価値を伝えて売っていきたいとあらためて思いました。
「通販」をやっているつもりはない
ネットショップで収益をあげようとは、まったく考えていないんです。皆さんに楽しんでもらえて、販路が広がるお手伝いができれば良い、本当にただそれだけなんですね。
商品発送の際には、自筆のお手紙を一緒に入れています。無味乾燥なやり取りはしたくないんです。
趣味であり、勉強
本業とは違うことへの挑戦は、大変だけど面白いですよ。ネットショップの運営で身についたノウハウなどは本業にも還元できる部分があります。ショップの運営から発送まで本当に自分ひとりでやっていますが、コロナの影響で会食や出張がなくなり、いつもよりは時間ができたことも大きかったですね。同世代からは「よくやるねぇ」と言われています(笑)
— 今後、扱っていきたい商品はありますか。
やはり食べ物が中心になると思いますが、普段使いのものを気軽に買ってもらえるようにしたいです。商品ラインナップを増やし、たくさん並んでいる中から選んでもらえたら良いですね。イメージとしては、福島県観光物産館です。
— ネットショップへの新規参入については、どのように考えていますか。
アイテムの少ない事業者は単独でネットショップを開設するのは難しいと思いますし、通販の参入障壁は正直に言って高いと思います。ビジネスにしていない理由も、やはりあると感じます。
だからこそ、セレクトショップが必要。是非、うちのプラットフォームを使って欲しいです。
「ちっちゃな商いの繰り返し」の先に
私は6代目ですが、ご先祖様が「ちっちゃな商いの繰り返し」という言葉を残しています。
ご先祖様もこういう気持ちでやっていたのかな、と思うんですね。大きなものをドンと売るのではなく、足で稼ぎ、汗をかいて。ビジネス本には載らないだろうけれど、この先にどのような変化があるのか楽しみでもあります。
— 最後に、メッセージをお願いします。
ネットショップに挑戦したいけど躊躇している、という方がいればぜひ一緒にやりましょう。使えるものは使ってください。業態を転換するのは本当にエネルギーがいることだと思うので、元々のものを活かしていくことが、やはり良いのではないかと思います。
オンライン販売は、まだまだこれから取り組んでいくべき分野です。まずは試しに、やってみましょう!
お話を聞きながら、「三方良し」の精神や大河ドラマでも話題の渋沢栄一が提唱した「合本主義」(より良い社会の実現のために資本や人材を合わせることの重要性を説いた考え)が頭の中に浮かびました。
どこまでもユーザー目線、事業者目線で優しさに溢れるエールギフト西形商店。それぞれの立場で、是非ご活用くださいね。
【取材/文 三廻部 麻衣】