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だるまさんシリーズを描いた『かがくいひろしの世界展』が福島県立美術館で開催中
わずか4年で16冊! 伝説の絵本作家の知られざる人生と笑顔の魔法の秘密がここに
「だ・る・ま・さ・ん・が〜」と、まあるい体をゆらゆら揺れ動かしながら、転んだり、伸びたり、つぶれたり。子どもたちは自然と笑顔になり、大人もつられて心が温かくなる……。
そんな魔法のような絵本『だるまさんシリーズ』を生み出した「かがくいひろし」さんの特別展『かがくいひろしの世界展』が2025年1月25日より、福島県美術館で開催されています。
今回の展覧会は、絵本原画やアイデアノート、教員時代に手がけた教材や人形劇等の作品のほか、大スクリーンでの絵本上映や、福島会場に合わせてつくられた初公開の作品など、盛りだくさん!
そしてなんと、おしゃべりOK!写真撮影OK! 泣いても笑っても大丈夫。赤ちゃんから大人まで、和気あいあいと楽しめる新しいかたちの美術館体験をすることができます。
私も絵本がボロボロになるまで我が子に読み聞かせた愛読者として、先生のルーツを知りたく足を運んできたのですが、愛に溢れた空間に幸せホルモンのオキシトシンが全開。すごく優しい気持ちになりました。
かがくいひろしとは? 伝説の絵本作家となった理由
刊行からわずか16年で、累計発行部数1,000万部を超える金字塔を打ち立てた絵本『だるまさん』シリーズの作者・かがくいひろしさん。
50歳で遅咲きの絵本作家デビューを果たすや、驚異的なスピードで16作品を次々と描き上げ、54歳の若さで急逝されました。その活動期間は、わずか4年。まさに彗星のごとく駆け抜けた絵本作家でしたが、それゆえに先生の素顔はあまり知られていませんでした。
50歳で絵本作家になる前は、いったい何をしていたのか。実は、特別支援学校のベテラン教員だったのです。
言葉を持たない子や思うように体を動かせない子など、さまざまな障がいのある子どもたちと身近に接する中で、どうしたら興味を惹き、楽しませることができるか……、自分には何ができるか…、と模索。28年にわたる現場経験の中で試行錯誤しながら日々書き留めたアイデアノートが、絵本を生み出す土壌となったそうです。
展覧会では、先生の原画やラフスケッチだけでなく、教員時代の貴重な資料や映像も紹介されており、“子どもたちを笑顔にしたい”という先生の想いが、作品の根底に流れていることを肌で感じることができます。
『かがくいひろしの世界展』の見どころ
それでは早速、見どころポイントを6つ、ご紹介していきますね。
① 16作品すべての原画展示
会場には、かがくいひろしさんが手がけた絵本原画250点や、600点近くの資料が展示されており、作品の繊細なタッチや色使い、そして絵本に込められた遊び心を間近で感じることができます。
まだアイデア段階のスケッチやラフ画なども多く、何度も読んだあの絵本はこんなふうに誕生していったのか……と、それぞれの絵本が形になっていくまでの過程を見ることができます。
また、先生が手がけた全16作品の絵本を読めるスペースも。
先生の絵本には、座布団が動き出したり、やかんが動き出したり、どれも身近で親しみやすい題材ばかり。私たちの日常にある小さなものへの愛情とユーモアが詰まっています。
② 教員時代の資料と人形劇
「子ども達から、たくさんのことを学びました。もし教師をしていなかったら、絵本を描くようにはならなかったでしょう。子ども達の喜びは、自分の喜びでした。それが絵本を作る原動力になっています」
過去のインタビューでそう話していた、かがくいひろしさん。28年という特別支援教育の中で先生は、一人ひとりに合わせた授業プランを考えたり、その子に合った教材を手作りしたり、教員仲間たちと「つくし劇場」という人形劇団を立ち上げ、言葉がわからない子どもでも楽しめる「音・動き・リズム・見立て」をメインにしたユーモラスな人形劇を上映したりして、子ども達を喜ばせていたそうです。
会場には「つくし劇場」を体験できるコーナーが!
牛乳パックやスリッパなど身近にあるものを材料とした人形を操って遊ぶことができます。
いずれも、先生が子どもたちとどのように向き合っていたのかが伝わる展示が用意されています。
③ 創作の秘密を解き明かすアイデアノート
かがくいひろしさんは常日頃からアイデアノートを持ち歩き、興味を惹かれたあらゆるものをこまめに記する方で、寝るときに枕元に置き、目覚めてすぐ夢の中で得たインスピレーションを描き留めることもよくあったそうです。
会場には、そんな遺された81冊もの宝のノートから厳選されたページが展示されています。
これはまさに日本の財産。かがくいひろしさんの頭の中を垣間見ることができますよ。
④ 未完作品と創作の軌跡! だるまさんシリーズの続き……
「あと3年はネタがある」と語っていたかがくいひろしさん。早すぎる死によって“未完”となった作品のラフスケッチや構想ノートが展示されています。
シリーズ3作がベストセラーになった「だるまさん」シリーズも、実はまだまだアイデアが温められていて、「だるまさんがころころ」「だるまさんがたべた」などのラフ画が残されています。
その他にも、たくさんの新作アイデアがいっぱい。
日の目を見ることなく終わってしまった先生のアイデアと想いが伝わってきて、胸が熱くなりました。先生の頭の中に溢れていたユーモアや想いが描かれた幻の絵本達をぜひ見てください。
⑤ 巨大スクリーンで映像体験!
会場では、作品の世界を体感して楽しめるよう、いくつか映像の展示もあります。会場限定で公開される「だるまさん」シリーズのアニメーション映像は、先生の机の上で創作された世界がスクリーンに映し出されます。
アニメーションに合わせた音も、先生が大好きだった「ロバの音楽座」という、音と遊びの世界を創造しているグループが楽器を使ってつけてくれています。その楽しい世界観に、映像に合わせて踊り出す子もいるそうですよ!
また、福島会場に合わせてつくられた初公開の影絵舞台の上映もあります。
こちらはなんと、先生が遺した作品や発想に触れる中で、新しいものが芽吹きはじめた展示会制作メンバーの方々の試み。未完の絵本「あかりをつけまーす」のアイデアを、影絵というかたちで再現したものです。
先生の愛に溢れた絵本作りの精神が受け継がれていく姿に、またまた胸が熱くなります。
このように展示品だけでなく、お子さんと一緒に楽しいひとときを過ごせる仕掛けが盛りだくさんです。
⑥ 充実したお土産コーナー
可愛いお土産も充実しています。絵本はもちろん、巨大絵本や、親子でペアルックできるエプロン、ポーチや雑貨など、愛らしいグッズが盛りだくさん! 自分用はもちろん、お土産やプレゼントにもぴったりです。支払いは現金とクレジットカードが使えます。
絵本がつなぐ笑顔の輪
いかがでしたか? かがくいひろし先生のぬくもりあるキャラクターたちは、家族と過ごすリビングから多く生まれたといわれています。日常の小さな発見を楽しむ心、日常にある小さな幸せに気づく心の大切さを感じながら、私は会場を後にしました。
最後に、かがくいひろし先生の「わたしのしあわせ」を載せます。
1. なんども なんども、くりかえし みてくれること。
2. 「え〜、なんで〜」「こんなの みたことな〜い」「びっくり〜」と いわれること。
3. おいしそうに くちに くわえてくれること。
4. いっしょに おふとんで だいて ねてくれること
5. うごきを まねして からだを うごかしてくれること
6. 「くすくす」「げらげら」「わっはは〜」「ひ〜ひ〜」と わらいころげてくれること。
7. こえにださずとも、こころのなかで たのしんでくれること
8. いきていると、へんてこりんで おもしろいものに であえるんだなあと おもってくれること。
ぜひ福島県美術館で、かがくいひろしの愛の魔法に包まれる温かい時間をお過ごしください!
なお、展覧会の人気に伴い、土日は駐車場が満車となることが多いため、公共交通機関のご利用が便利です。
かがくいひろしの世界展の詳細
期間 |
2025年1月25日(土)~3月9日(日) |
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場所 | 福島県立美術館(福島県福島市森合字西養山1番地) |
料金 |
※身体障がい者手帳、療育手帳、精神障がい者保健福祉手帳をお持ちの方は無料。 |
休館日 | 月曜(2月24日は開館)/2月12日(水)、2月25日(火)は休館 |
駐車場 | あり |
公共交通機関 アクセス |
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問合せ | 福島県立美術館 TEL:024-531-5511 |
備考 |
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美術館の周辺には、歩いて行ける距離に、懐かしい甘食の専門店「結」や、おしゃれなカフェ「ANTIQUE」などいろいろなお店があるほか、県立美術館内にも厳選されたスパイスを使った本格的なカレーが楽しめる「Curry and Spice dishes笑夢」が併設されていますよ。カフェやランチの参考にしてみてくださいね!