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果樹加工勉強会参加者インタビュー Vol.2|キッチンカプリッチョ 増川浩二さん
勉強会をきっかけに、デザートメニューのバリエーションを増やす
2024年9月~11月まで全3回開催された「果樹加工勉強会」。市内5事業者が規格外果物を使ったピューレの活用方法を模索し、各事業者ごとの課題や展望に合わせた商品を開発するという取り組みです。
参加事業者の思いや背景を深掘りするべく、3事業者へインタビューを実施しています。
インタビューお二人目は、飯坂温泉街から程近い飯坂町平野でイタリアンレストラン「キッチンカプリッチョ」を経営する、増川浩二さん。
報告会で桃ピューレを使用したミニコースをライブキッチン風に披露してくださった増川さんに、勉強会への参加の背景、メニュー開発秘話、学びの振り返りなどのお話を伺いました。
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石焼パスタが名物のイタリアンレストラン
店名はイタリア語で「気まぐれ」という「キッチンカプリッチョ」は、福島市飯坂町にあるアットホームな雰囲気のイタリアンレストラン。オーナー兼シェフの増川さんがお一人で経営しています。県内外の結婚式場でフレンチや和食、イタリアンなどを経験してきた増川さんが手がける、熱々の石焼き生パスタが人気メニューです。
——果樹加工勉強会に参加したきっかけを教えてください
2024年に初めて「ピーチホリデイ」の参加店となり、そのつながりで勉強会に誘ってもらいました。果樹生産者と飲食店などの事業者をつなぎ、小さな傷や形がいびつなだけで規格外になってしまった新鮮な桃を旬の時期に市内で提供することで、フードロスを防ぎ「規格外桃の高付加価値化」を図るピーチホリデイのコンセプトが店のコンセプトにピタッとはまっていたのと、女性客が9割なので、健康や美肌が期待できる食材や効果的なフルーツを探していて、桃やりんごは文句ない商品でしたので、ホリデイ事業に参加しました。
ピーチホリデイに参加したことで、「デザートもやってるんだね」とお客様から反応がありました。レストランは予約が必須だと勘違いしているお客様も多かったので、デザートだけでも気軽に食べに来ていただけるようになって良かったです。
——果樹加工勉強会に参加していかがでしたか?
県外・海外向けに商品開発をするためのブランディングの話からスタートし、私のレストランは県内のお客様が対象なのでターゲットは他の事業者とは少し違っていましたが、レベルの高い勉強会で、とても参考になりました。普段なら絶対に会えない方々とお話ができて、つながりができたのも良かったです。
メニューは無限大! ピューレを使ったミニコース開発秘話
——りんごピューレを使ったメニューも考案されたそうですね
りんごピューレを使うならこんなメニューができるという一例をご紹介します。
- スモークサーモンレモンクリームのパスタ
- りんごのノンアルカクテル(ホワイトサワーベース)
- りんごのデザート(ラム酒でフランベして完成)
りんごは日持ちもしますし、年間を通して流通しており、桃と比べて希少性が低いので、見せ方などを工夫する必要があります。
一方、桃ピューレはとても使いやすかったです。11月25日のお披露目では搬入の関係でこれが限界でしたが、やり方は無限大です。
——りんごコースも桃コースもとても品数が多いですね!
私は一回ピューレの味をみれば、どんな料理にするか大体頭の中で組み立てられます。できる品数が多すぎるので「今回はどれでいこうか」と、厳選するほうに悩みました。考えるのが楽しいんですよね。
カジュアルに楽しめる値段設定ができるように、桃ピューレはコースメニュー7品を作りました。例えば、パスタとスープだけのセットメニューにしたり、デザートだけ、スープだけといったかたちで提供したりと、組み合わせを自由に変えられます。
——メニュー開発で苦労したところは?
りんごピューレは味的には使いやすいのですが、特別感を出すことが難しいです。りんごは青森が生産量第1位でイメージが強いですし、商品数も多いので、何をやっても二番煎じととられてしまいます。
なので、誰もやらないことをやろうと、果物のピューレをナポリタン、クリームパスタ、カルボナーラなどのパスタに使ってみました。
——増川さんがピューレを使うメリットは?
皮をむく、芯を取る、切る、ピューレ状にする、皮と芯を捨てる、といった手間や廃棄が減ることですね。私のようなレストランを一人で経営しているところには1次加工品はとてもありがたいです。
近年、食材価格が高騰していますが、今後は人件費を省くために1次加工品の需要が増すことは間違いないと思います。福島市産のピューレも、広報や周知を進めて多くの人に知っていただきたいですね。
事業者同士で知恵やアイデアを持ち寄り、今までにない取り組みを!
——勉強会に参加する前と後で変化はありましたか?
泡立て器の機材を購入しました。メレンゲやクリームができるのでデザートのメニューが広がります。県産の桃やりんごを使ったスフレパンケーキも提供できます。県産の果物をアピールしてるところはあまりないと思います。
——他事業者とのつながりはできましたか?
私のレストランを会場に勉強会オフ会を開催し、LINEグループでつながりができました。その中でも一番の収穫は、あづま果樹園さんとご縁ができたことですね。
勉強会ではピューレは限られた量しか配布されなかったので、ピューレがなくなった後は、あづま果樹園さんからお互いメリットのある価格でジュースとジャムを購入しています。通年販売できるそうで、開封前なら常温で保管もできます。仕入れが確定すればいろいろなメニューを展開できるようになりますね。
——今後の展望を教えてください
ゆくゆくは勉強会のメンバーで一つの商品をつくりたいと思っています。いくらアイデアや構想を持っていても、私一人ではできることが限られるので、できる人ができることを担当する形で共同開発できたらいいですね。
開発した商品は、外国人観光客が多く訪れる飯坂温泉に隣接する中野不動尊や医王寺で扱っていただいたり、アパレルなど飲食に関係ない業種の店に置いてもらうのも一つの方法だと思います。
同じように、福島市産ピューレの卸先は、製菓やレストランだけでは先が見えている気がするので、介護施設や病院、市や県の庁舎内食堂、学食など、毎日大量消費される食堂などで使ってもらうのはいかがでしょうか。県内の社食業者は大手なので、福島市産ピューレが全国に広がる可能性もあります。
代り映えしないことをやるのは楽ですが、変化も必要です。飲食とは関係ない事業者も巻き込んでかけ算していけば、もっといいアイデアが生まれると思います。やれることは全部やっていきたいです。
あとはいかに継続するかも課題だと思います。勉強会メンバーは女性が多かったので、女性の感性を活かした率直な意見を出してもらい、発信し続けてもらいたいですね。
勉強会を経て、さらにアイデアがふくらむ
増川さんとお話していると、次から次へと斬新なアイデアが飛び出してきて、新しい挑戦への意欲が強い方だなと感じました。勉強会を経て、さまざまな事業者とのつながりができたことで、さらにアイデアがふくらんでいる様子でした。
お一人では難しいことでも、勉強会でつながった事業者と共に実現に向けて突き進んでいってほしいです。
次回は、福祉事業所「ラポール泉」の仲沼さんにインタビューを実施します。福祉事業所の利用者と焼き菓子やチョコ菓子などのお菓子を作り「アットホーム sweets shop」で販売している仲沼さんに、商品開発秘話や今後の展望をお聞きします。