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他業種連携で地域の課題解決の道を探る、果樹加工勉強会も佳境に突入!
第2回 果樹加工勉強会・意見交換会(10/21)参加レポート
2024年10月21日、「果樹加工勉強会・意見交換会」の第2回目が開催されました。今回も会場は福島市松川町にある「カンパイバル」。9月の第1回勉強会で持ち帰った桃の試作ピューレの使用感を確かめてもらいながら、各事業者が抱える課題に合わせて新たなメニュー開発を進めています。
今回の勉強会では衛生管理方法などを確認し、ピューレを使った商品開発の途中経過報告を交えてフリートークを行いました。その様子をレポートしていきます。
見えてきた果樹加工勉強会の2つのゴール
はじめに福島市観光コンベンション協会の金澤さんより、前回の勉強会を受けて見えてきたという2つのゴールについて説明がありました。
ゴール1|福島市内や伊達エリアなど地産地消向けの活用を想定
果樹園と、飲食店や宿泊施設、福祉施設などの事業者が直接つながり、果樹園で出たさまざまな規格外品を活用した「違いそのものを楽しむピューレ」を小規模に作る。
- 時期ごと、品種ごとなどに分けた小回りがきくピューレにし、味や甘味のばらつきに応じたメニューを開発する。
- 小さな加工場で対応が可能。
- 各事業者が直接果樹園を訪れて収穫などを手伝い、その時々の品種の特徴などの理解を深める。果樹園の販路開拓や収穫期の人手不足解消にもつなげたい。
ゴール2|福島の果樹を広く周知するための全国販売・海外輸出での活用を想定
大量の規格外の果物を一か所に集め、一定の糖度に分け、加糖しないピューレを量産する。
- 福島市内全体で出る膨大な量の規格外果樹を処理するため、大規模な加工場が必要となる。
- 行政やJAの協力も必要。
- 大量の果樹(特に傷みの早い桃)を収穫最盛期に加工することは難しいが、果樹の劣化を一時的に止めて一時保管場所を確保できれば、12月中旬から半年間仕事のない果樹園スタッフの働き口確保にもつながる。
この2つのゴールが見えてきましたが、大規模な加工設備をすぐに整備するのは難しいので、まずはできるところから小規模にゴール1を目指し、ゆくゆくは行政やJAの協力を仰いでゴール2にも乗り出していきたい考えです。
続いて、試作ピューレ3種の使用感の共有が行われました。実際に各事業者でピューレを使ってみて出た感想や意見をご紹介します。
さくら白桃(ピンク)写真右
- 一番美味しくて使いやすい商品
- 色がとてもきれいなので、前面に出したメニューが良い
- デザートやグラニテ(シャーベット状の氷菓)やソースにする方向で進めている
さくら白桃(薄ピンク)写真中央
- 二番目に美味しい商品。
- ドレッシングや冷製パスタなどで使いやすい
- 程よい甘さを活かしたアプローチにしたい。
黄金桃(黄色)写真左
- 個性や素材を感じるピューレ。
- 温製の料理で引き立つ。
また「キッチンカプリッチョ」シェフの増川さんからは、料理人ならではのこんな意見も出ました。
増川さん:
完璧で美味しいピューレよりも、味や糖度が違うピューレの方が商品価値が上がるのでは。料理でいえば、フランチャイズの味にするのか、個人店の味にするのかの違い。フランチャイズは全国どこでも同じ味が出せるが画一的。個人店では素材や個性の味を生かした調理法で毎回違う味を出せる。せっかく福島には多くの果物の品種があるのだから、他では作れないものを作って提供するほうが喜ばれると思う。
事業者同士がざっくばらんに語り合うフリートークタイム
第1回勉強会アンケートで「事業者同士でもっと話ができる時間があると良い」「色々質問したい」といった声が多かったことから、フリートークの時間がたっぷりとられました。講師の齋藤さんを中心に、幅広いトークテーマで議論が交わされました。
今回は、日頃の農家の現状を発信したいと、福島市渡利の花見山中腹にある果樹農家「佐藤農園」の佐藤幸三さんも勉強会に参加してくださいました。佐藤さんからの意見をご紹介します。
佐藤さん:
農業は一人でやっていてはダメだと感じる。農福連携で、福祉事業所の利用者さんに手伝ってもらい助かっている。一人だと丸一日かかる草刈りも、5~6人に手伝ってもらうと数時間で作業が終わる。福祉事業所ではパン作りやお菓子作りなども行っていて、ジャムやジュースなどの販路にもつながる可能性がある。
私が果樹園の現場で農業や加工技術を利用者に教える代わりに、福祉事業所の手を借りられれば、お互いにWin-Winの関係を築ける。将来は加工も一緒にやりたい。ゆくゆくは福祉事業所の方たちが、私の実家の畑を活用して事業に乗り出してもらえればうれしい。
その意見に賛同するかたちで、齋藤さんからこんな意見が。
齋藤さん:
現在、金澤さんも力を入れている農福連携はこれからはマストになる。農作業体験は県外の人からすると魅力的なコンテンツにもなる。
一人だと限界があるが、事業者同士が連携して知恵を出しあえば広がっていく。福祉事業所の利用者も自立が必要なので、支援をしていきたい。
その他にも、議題に挙がったトピックをいくつか紹介します。
提案・相談
- ピューレ加工前の農家さん側の桃の保存方法を工夫してもらいたい。
- ピューレの色味など質によってB級、C級など分けてみては。
- レモン、ライム、ゆずなど柑橘系でピューレの色止めをしてみては。皮のすりおろしを加えて風味を足しても良い。
- 旅館の朝食は印象に残るので、朝のデザートを福島の果物を使った特別なものにすると県外の人に喜ばれるかも。
- ぶどうの一次加工品の買取価格について相談。
課題
- ジュース業者の買い取り価格が低すぎる(1キロ30円)
出口戦略
- 各事業者で ①栽培・生産 ②製造・小売り ③販売 この3つを分業して得意分野を担当できると良い。
- ペット用商品ならピューレの色は気にしなくても良い。
- 日本の桃は「美味しすぎて桃じゃない」とまで言われるくらい、海外では高い評価を受けている。海外富裕層に桃狩りツアーは受ける。
- 生の桃の出荷は難しいが、加工桃なら海外に輸出が可能。
- ロゴなどのデザインは個々に作らず共通したものがあるほうが動きやすい。勉強会メンバーでチームを組んで、福島のプライベートブランドを目指すのも一つの手。
試作品の試食やピューレの試作実演の場も
ラポール泉さんの試作品を試食
「ラポール泉」の仲沼さんは開発メニューの試作品を数点持参してくださり、プチ試食が行われました。桃ピューレと泡立てた生クリームを混ぜたものと、ピューレを煮詰めたものを泡立てた生クリームと合わせてゼラチンで固めたものを試食。
福祉事業所の利用者が作業することを念頭に置いてメニューを模索しているとのことで、各事業者さんに味の感想や意見を求めていました。どのようなメニューや商品に活かされていくのかが楽しみですね。
晩生種の桃CX(クリスマスピーチ)を試食
晩生種の桃「CX」は、冷蔵で管理するとクリスマス頃まで販売できることから「クリスマスピーチ」と呼ばれ、生産量が少なく貴重な桃です。私もCXを試食させてもらいました。
皮はゼブラのような模様になるのが特徴で、果肉はかため。日が経ってもやわらかくならない品種です。色は白みがかっていますが、甘みはちゃんとあります。
CXを試食した事業者からは「クリスマスだけじゃもったいない。福島のおせちに桃を使った料理が入っていたら面白いね」「旅館の食事の先付けに桃の食感を楽しむメニューを追加できそう」なんてアイデアも飛び出しました。
「酒とペアリングした、福島ならではの大人の食べ方も提案できそう」と、各事業者の期待も膨らみます。
クリスマス商戦に向けてしっかりブランディングしていけば「冬なのに桃が食べられる」と、福島市の有力な商品になりそうですね。
りんごピューレ試作の実演
最後に果物のピューレの試作の様子を、講師の齋藤さんに実演していただきました。
半冷凍状態のりんごをスロージューサーに入れて果肉と果汁を分けていきます。
スロージューサーは低温で処理ができるので、ミキサーなどに比べて色が変わりにくいところが長所。分離した果肉と果汁を一つにまとめ、粉末の水飴などを入れ、混ぜてから真空パック詰めをします。
齋藤さんは熱が入る真空包装機は使わず、水に沈めて空気を抜く方法を採用。その後、急速冷凍して完成です。
事業者の皆さんは「果肉の粗さは選べる?」「食感を残したい場合は、ざく切りしたりんごを入れて冷凍も可能?」などと質問を投げかけ、興味津々の様子でした。
事業者同士の結束を強め、ゴールに向けてラストスパート
第2回目の勉強会も大盛り上がりで、30分も時間をオーバーしてお開きとなりました。さらに「まだまだしゃべり足りない!」と、第3回報告会前に参加メンバーでオフ会も計画しているそうです。
11月下旬にいよいよ最終報告会を迎えるこの取り組み。事業者同士の横のつながりを強め、地域で結束して福島を盛り上げていってほしいです!