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ワイナリー吾妻山麓よりオール福島市産ワインが誕生
苦難を乗り越え、5年目にして待望のリリース
あづま山麓エリアに集まった「ふく酒街道」5社のうちの一社として期待を集める「ワイナリー吾妻山麓」。山形県や長野県産のワイン用ブドウで造った「シャルドネ」「メルロ」など、代表的な品種のワインをはじめ、福島県会津地方で栽培されたブドウを使った「新鶴シャルドネ」、福島市産のリンゴを使った「ふくしまシードル」など、個性が光るお酒を醸造しています。
そんなワイナリー吾妻山麓で、自社栽培のブドウを使った自社製造のエステートワイン2種が、7月31日より発売になりました。いずれも限定生産です。
今回の記事では、ワイナリー吾妻山麓 会長の横山泰仁(やすひと)さんと、販売・企画マネージャーの齋藤慶子さんに、ブドウ栽培へのこだわりやエステートワインの出来、今後の展望などのお話を聞いてきました。
ワイナリー吾妻山麓 誕生秘話の記事も合わせてご覧ください。
エステートワインとは
エステート(Estate)とは英語で「不動産、財産」などを意味する言葉ですが、ワインの場合はブドウの栽培から醸造・瓶詰まで一貫して行うワインを指します。そのため、エステートワインはブドウの特徴や土壌の個性、ワイナリーの強いこだわりを反映したワインになります。
ワイナリー吾妻山麓では現在6種類のブドウを育てており、自社畑で2023年に収穫したブドウを使って2種のワインを醸造しました。
「2023年に収穫したブドウの樹は4年目でまだ若いため、狙った水準までは達していないものの、充分商品として出せるレベルになりました」と横山会長は胸を張ります。
この夏リリースしたワイン2種をご紹介
FUMÉ BLANC 2023(フュメ・ブラン)
吾妻地区は、高湯温泉から硫黄の香りが流れてくる珍しい土壌です。フュメとは、フランス語で「煙でいぶした」という意味。温泉地ならではの特徴を表したワインです。
草原を吹き渡る風、トロピカルフルーツのようなニュアンス、そしてスモーキーなテイストのある白ワイン
生産本数:300本
産地:福島市桜本・上野寺
ブドウ品種:ソーヴィニヨン・ブラン
収穫年:2023
醸造法:ステンレス樽熟成(6か月)
容量:750mL
アルコール:12.5%
酒質:辛口
ALVARINHO 2023 (アルバリーニョ)
アルバリーニョはスペインやポルトガルが原産の、海の近くで作られるブドウで、ワインは海鮮によく合うのだそう。
柑橘や福島の桃、紅茶などを彷彿させる、爽やかな酸味が特徴の白ワイン
生産本数:150本
産地:福島市桜本
ブドウ品種:アルバリーニョ
収穫年:2023
醸造法:ステンレス熟成(6か月)
容量:750mL
アルコール:11.5%
酒質:辛口
アルバリーニョを私もいただいてみました。生産地でオール福島市産のワインをいただけるなんて贅沢!
爽やかな酸味の中に、ほのかに柑橘や桃の香りを感じます。とても飲みやすく、女性に好まれそうなワインです。
どちらのワインも、一般的に白ワインに合うといわれる料理や食材(カルパッチョやチーズ、生ハムなど)にマッチするそう。ぜひ食事とのペアリングを楽しんでください。
エステートワイン2種は、ワイナリー吾妻山麓のワインショップか、オンラインショップで数量限定で販売しています。
コロナ禍真っ只中にブドウ栽培をスタート
ワイナリー吾妻山麓で初リリースとなった待望のエステートワインですが、完成までには長い道のりがありました。
自社管理畑「横森ヴィンヤード」について、横山会長はこう話します。
横山会長:
福島市産ワインを造ろうとブドウ栽培ができる場所を市内で探していたところ「この土地でやってみないか」とお話をいただき、土壌を調査しました。このあたり一帯は吾妻山裾野の傾斜地で、火山灰や溶岩が混じる水はけがよい土壌です。標高は約300m弱。市内と比べると涼しく、夜の寒暖差もしっかりある。
福島市内を一望でき、ロケーションが良いこの場所なら、たくさんのお客さんが呼べるんじゃないかと期待が持てました。
自身がワインに思い入れがあったこと、そして「吾妻地区を人が集まる場所にしたい」という土地の所有者の想いに応えようと一念発起。2019年に醸造所を設立後、福島市の気候に適しているであろうブドウ6品種を選び、福島市産のワインづくりのためのブドウ栽培を2020年から始めました。
2020年といえば、ちょうどコロナ禍が始まった年。新聞でブドウ栽培ボランティアの募集をかけたところ約100人の応募がありましたが、大人数での作業は難しいと判断し、泣く泣く顔見知りの20人程に絞ることに。
「少人数で5,000本ものブドウの苗を植える作業が連日朝から晩まで続き、とても大変でした」と横山会長は当時を振り返ります。
気軽に人が集える場所を目指して
ワイナリー吾妻山麓の敷地内にあるワインショップでは、リリースしたワインの販売のほか、ワインサーバーでの有料試飲も行っています。他にも、ノンアルコールドリンク、アイス、おつまみメニュー、ワイングッズなども販売。
福島市街地を一望できるテラス席もあり、カフェとして休憩にも最適です。
こちらは齋藤さんおすすめの新商品「ピーチアールグレイアイスティ」。季節限定のノンアルコールドリンクです(桃シロップが無くなり次第終了)。
アールグレイのアイスティーには自家製桃シロップがたっぷり。レモンを絞ってよく混ぜていただきます。桃シロップが鮮やかなピンク色で、見た目もかわいらしいドリンクです。
齋藤さん:
「景色を見ながらランチが食べたい」という声が多かったことから、土日をメインにランチ営業もスタートしました。店内やテラスにはテーブル席やソファがあり、気候の良い日はテラスでも食事が可能です。ランチ営業は不定期営業なので、SNS(Instagram・Facebook・公式サイト)で最新情報をチェックしてください。景色を楽しみにふらっと立ち寄ってもらえたら嬉しいです。
ワインを美味しく飲むための保存方法
「ワインって、買った後は冷やしたほうがいいの?」「一度開けたワインはどうやって保存するの?」そんな疑問をお持ちの方も多いはず。そこで、ワインを長く美味しく楽しむための保存方法を、スタッフの齋藤さんにお聞きしました。
齋藤さん:
ワインの保存に最適な温度は約15度。野菜など生ものと同じ扱いで、真夏の車内に放置すると味が落ちてしまいます。暑い日に持ち運ぶ場合、クーラーの効いた車内であれば問題ありませんが、長時間高温になるときは保冷剤入りの保冷バッグを持参すると安心です。
飲み切れなかったワインはスクリューキャップやコルクで栓をして冷蔵庫に入れ、風味が落ちないようになるべくお早目にお飲みください。真空状態にして劣化を防げるストッパーなども販売しているので、より長く美味しいワインを楽しみたい方はお求めください。
エステートワインの今後に期待
最後に、横山会長にエステートワインの今後の展望についてお聞きしました。
横山会長:
たくさんのボランティアの方のおかげで「横森ヴィンヤード」では良いブドウが育ってきています。ですが、ブドウの樹は10~20年経ってようやく成熟したといえるほど、成長に時間がかかるもの。ブドウの樹もワインも、年を追うごとに育っていきます。白3品種・赤3品種、2024年はどれくらいの出来栄えになるか、成長を楽しみにしています。