掲載日 /
土木技術と観光の融合! 福島のインフラ施設を巡るツアーに参加
地域固有の観光資源、公共土木施設(インフラ)の魅力
最近「インフラツーリズム」という言葉をよく耳にするようになりましたよね。インフラツーリズムとは「インフラストラクチャー(公共土木施設)」の見学や体験を目的とした観光のこと。
ダムや発電所・橋・鉄道施設など、従来の観光では訪れないインフラツーリズムが注目を集め、土木技術や工学に興味がある人はもちろん、家族連れも楽しみながら学べる新しい観光の形として人気が高まっています。
今回、観光ノート編集部は、福島県が実施する「ふくしまインフラツーリズム推進事業」の一環として福島市で行われたモニターツアーに参加して、ふくしまのインフラ施設を巡り、新たな観光資源の魅力を発見してきました。
私たちの快適な生活を支えるインフラに興味を持ったり、福島県内のインフラ施設を訪れるきっかけになれば嬉しいです!
目次
荒ぶる川から地域を守る堤防の役目「荒川土木遺産」
福島駅から車で約20分。「荒川土木遺産」は四季折々の花や景観、農産物がたのしめる市民憩いの公園「四季の里」の周辺に点在しています。
荒川土木遺産は、福島市内を流れる一級河川 「荒川」沿いに連なる、江戸時代から昭和にかけて造られたダム(砂防堰堤)の集まりです。「地蔵原堰堤(じぞうはらえんてい)」などの15基は、国の登録有形文化財にも登録されています。
14年連続で水質日本一に輝く荒川ですが、名前の通り、昔はよく氾濫する荒ぶる川でした。
荒川の治水・砂防の要である「地蔵原堰堤」は、大正14(1925)年5月に竣工され、数度の増強・補修を行い、昭和28(1953)年にほぼ現在の姿になりました。間近に見ると大正時代の建造物とは思えない迫力があります。
四季の里の北西に位置するバラ園を抜けると、朝ドラ「エール」のオープニングで主人公の裕一と音がたたずんでいた、緑豊かな「水林自然林」があります。ここはもともと堤防沿いに配置された、水を防ぐための人工林=水防林として維持されてきました。
水防林の中には「霞堤(かすみてい)」という、江戸時代後期から昭和初期に作られた、切れ目のある不連続の堤防が残っています。増水した川の水を堤防の切れ目から背後に逃がすことで、下流の氾濫を吸収し被害を軽減する役割があるそうで、先人の知恵には驚かされます。
プロ野球スタジアムと同じ人工芝の「福島県営あづま球場」
東京2020オリンピックで野球とソフトボールの会場として使用された福島県営あづま球場は、荒川土木遺産からもほど近い荒川沿いに整備された、面積100ヘクタールにおよぶあづま運動公園の中にあります。
あづま球場は1986年に完成し、収容人数は3万人。球場の面積は全国2位の規模で、ファウルゾーンが広いことが特徴です。
オリンピック競技会場の決定を受け、グランド面は人工芝への改修が行われました。また、トイレの洋式化、車椅子用観覧席の増設などを行いバリアフリー化に配慮した施設となっています。
改修された人工芝は、プロ野球のスタジアムに使用されるものが施工されました。改修前の天然芝と比べると水はけがよく、雨が降っても数時間でコンディションを回復することができます。また人工芝にゴムチップをまくことでクッション性を高め、選手の安全確保にも配慮したそうです。
ダム湖でカヤック体験もできる「摺上川ダム」
摺上川ダムは福島駅から車で約45分、奥州三名湯の一つ飯坂温泉の上流にあります。ダム湖の面積は東京ドーム約98個分の4.6平方キロメートル、貯められる水の量は約1億5000万立方メートル(25mプール約31万4000個分)の、中央コア型ロックフィルダムです。
摺上川ダムは、水害を防ぐための洪水調節やかんがい用水補給、工業用水確保に加え、水力発電、そして福島市民の飲み水(水道水)など多目的ダムとして、さまざまな役割で人々の生活を支えています。
ダムの脇にはインフォメーションセンターがあり、摺上川ダムの主な施設を立体的に見ることができるダム立体模型の展示や、ダムの役割などについて学ぶことのできる学習コーナーなどが設けられています。ダムファンに人気のダムカードも配布されていますよ。
エンジン付きの船が禁止されている穏やかで美しいダムの湖面では、カヤック(カヌー)が体験できます。2人乗りのカヤックもあるので、お子さまと一緒に楽しめますよ。初めてでも湖の中ほどまで自分で漕いで進むことができ、インストラクターも同行してくれるので安心してチャレンジできますね。
国内に現存する最古級の鋼製アーチ橋「十綱橋」
福島駅から車で約30分、福島交通飯坂線で約25分で到着する飯坂温泉には、大正4年に架けられた国内に現存する最古級の鋼製アーチ橋「十綱橋(とつなばし)」があります。
飯坂温泉街を貫く摺上川にかかる全長52mの十綱橋は、飯坂温泉駅すぐとなりに位置しています。平成16年に土木遺産に選ばれ、令和2年に国登録有形文化財に登録されました。
断面がL字型の山形鋼を組み合わせたブレースドリブアーチと、垂直材からなる繊細な外観は、洗練された美しさでランドマークとしても親しまれています。
夜間にはライトアップも行われ、昼とは違う幻想的な雰囲気を醸し出しますよ。
インフラ施設の魅力を紹介するポータルサイト
福島県では2023年に、県内のインフラツーリズムの魅力を広く情報発信するため「ふくしまインフラツーリズムポータルサイト」が開設され、ダムや橋などの公共土木施設(インフラ)そのものを地域固有の観光資源として位置づけ、地域活性化に寄与する取り組みが盛んに行われています。
ポータルサイトでは今回巡ったインフラ施設の詳しい情報や、福島県内にたくさんあるインフラ施設をエリア別で紹介しています!
インフラ施設の新たな魅力を発見できるインフラツーリズム。新しい観光資源を巡ってみませんか?