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古代の製鉄炉を復元し、砂鉄から刀を作る!「立子山たたら」10年目の挑戦

古代のロマンをたたらで体験

福島市立子山に構える刀匠・藤安将平さんの鍛冶場「将平鍛刀場」の一角で、「立子山たたら」が6月29日(土)に開催されました。

「立子山たたら」は、奈良時代に使われていた製鉄炉を当時のままに復元し、当時と同じ方法で砂鉄から取り出した鉄で日本刀を作るという挑戦で、今年で10年目となります。

何でも簡単に手に入る現代に、あえて時間をかけて奈良時代と同じ方法で炉を作り、同じ砂鉄、同じ木炭を用意して古刀を作る。千年の時をこえて当時の人々と繋がるようなロマンを感じます。

果たして今回は鉄が取れたのでしょうか。ぜひご覧ください。

「立子山たたら」とは

「たたら」といえば皆さん、映画「もののけ姫」を真っ先に思い浮かべるのではないかと思います。
たたら製鉄とは、粘土で作った炉で木炭を燃やし、砂鉄を高温で溶かして鉄を生産する方法で、日本固有の製鉄法とされています。映画では木炭を燃やす空気を送り込むために、足で踏むふいごが使われていましたよね。

立子山たたらでは、鍛刀場の一角の斜面を利用して、粘土で高さ2メートルほどの大きな筒状の「竪型炉」が作られています。この炉を作るだけでも約2か月かかっているとのこと。

立子山たたらの「竪型炉」

斜面の上には映画と同様の足踏み式ふいごがあり、二人一組でタイミングを合わせて天秤状の板の左右を踏み込みます。踏むたびに炉の中に空気が送り込まれ、炉の上に置かれた木炭から勢いよく炎が燃え上がります。
この高温の炉内に上から砂鉄を入れて溶かし、炉の最下部に円盤状の鉄の塊ができれば成功です。

炉に砂鉄を投入する様子

炉の上部から砂鉄を投入

たたらは、一度始まれば木炭を燃やし続けなくてはなりません。このたたらを踏む人を「番子(ばんこ)」と呼ぶのですが、交代で作業を行うことを「かわりばんこ」と言うのは、これが語源なのだそうです。

たたらを踏む
作業の計画表

刀匠・藤安さんは19歳で刀鍛冶を志して以来57年間、日本刀の頂点といわれる鎌倉時代の「古刀」の再現に邁進しています。
その藤安さんと、古代炉を復元し鉄を作るという挑戦をしていた吉田秀享(ひでゆき)さんが出会います。
10年前、福島県文化振興財団の遺跡調査員をしていた吉田さん(現在は川俣町教育委員会)は、古代と同じ方法・同じ材料で鉄を作れないかと実験を始めました。その翌年から藤安さんとともに挑戦を続けています。

砂鉄の溶け具合を確かめる、藤安さんと吉田さん

砂鉄の溶け具合を確かめる、藤安さん(中央)と吉田さん(右)

古代炉には形状から2つの種類がありますが、今回のような竪型炉を再現して製鉄に挑戦しているのは現在のところ立子山しかありません
今回も日本各地から研究者や学生の皆さん約50名が集まりました。昨年は沖縄から、今年は長崎から来られた方もいらっしゃいました。

吉田さんが最初に挑戦していたのは平安時代の炉、立子山ではさらに古い奈良時代の炉を再現。
古代の人たちも使ったであろう、浜通りにある製鉄遺跡近くの海岸から集めた砂鉄と、くぬぎの木炭を使用しています。

浜通りは日本有数の鉄の生産地だった

古代炉は、南相馬市小高にある横大道(よこだいどう)製鉄遺跡で発掘された炉を再現しています。
実は、浜通りでは61もの製鉄遺跡が見つかっており、東日本で最大級の製鉄所集積地だったといわれています。

最後に鉄を取り出すときには炉の一部を壊さないと取り出せないため、発掘された炉を調査しても、鉄を取り出すために壊したものなのか、それとも自然に壊れてしまったものなのかの区別が大変難しく、わからないことがたくさんあるのだそうです。

炉内の様子を確認する、藤安さん(左)と吉田さん(右)

今年は鉄が取れたのか

これまでの9年間のうち、ある程度まとまった量の鉄が採れたのは5回目に約9kg、前回9回目では1.2kgでした。
今回の10号炉では残念ながら玉鋼のような塊とはなりませんでしたが、炭素量の高い小さな丸い銑鉄(せんてつ)が約3kg採れました。

出来上がった鉄

出来上がった鉄

吉田さんの総評は「40%は成功で、60%は失敗」とのことでしたが、前回までと違い、ノロと呼ばれる溶けた鉄が炉の底穴から流れ出てきたのは大きな成果だったそう。また今回から砕いた貝の粉を新たに使用したおかげで、砂鉄が飛ばなかったのもよかったと。

まちがいなく前回よりは量が採れており、これまでの経験から一歩前進したと思う」とのことでした。

炉の解体の様子

炉の解体の様子

炉解体で出た鉄の選別

炉を解体し取り出した鉄の選別

古代の人たちは、現代と比べて格段に少ない道具や設備でいったいどのようにして大量の鉄や玉鋼を造っていたのでしょうか。また、頻繁に起きる戦に備えて短期間に大量生産されていたはずの平安〜鎌倉時代の古刀は、なぜ現代の技術を持ってしても作れないほど高品質な刀になったのでしょうか。まだまだ解けない謎がたくさんあります。

吉田さんと藤安さんの挑戦は、来年以降も続きます。

来年もたたらイベントを開催予定

来年の夏頃には、11回目となる立子山たたらを行う予定とのことです。今回のイベントは参加者が研究者や関係者に限られていましたが、次回は一般参加も可能(予約制)で、今年より大きな規模で開催予定です。

詳細が決まり次第、観光ノートでもご案内しますので楽しみにお待ちください!

また将平鍛刀場のX(旧Twitter)でも随時情報を発信していますので、チェックしてみてくださいね。

8月に飯舘村で古代炉復元と蕨手刀製作のイベント

8月3日(土)、4日(日)に、飯舘村で「山の向こうから鐵を打つ音が聞こえる」と題したイベントが開催されます。

3日(土)には今回と同様の「古代復元炉の操業」と、そして出来上がった鉄から、当時の道具であった「蕨手刀(わらびてとう)」製作実演が行われます。実演はもちろん藤安さんです。
4日(日)には鉄の丸棒を平らに打ちのばしたり、砂鉄スライムを作るワークショップ(事前予約制)も開催。
両日ともに飯舘村と近隣市町村の飲食店の出店もあるそうですよ!

お子さんの夏休みの自由研究に、また実際にふいごを吹いたり砂鉄に触れたりと古のロマンを感じられる貴重な体験で大人も楽しめますので、ぜひ参加してみてはいかがでしょうか。
入場は予約不要です(入場料は、高校生以上500円/人)。

8月4日のワークショップは、砂鉄スライム作りのみ事前予約が必要で、対象年齢は小学3年生以上。
予約の締切は7月28日(日)です。

詳しくはイベント案内ページ
https://yamatetsu.peatix.com/

または、主催の株式会社二瓶刃物さんにお問い合わせください。

株式会社二瓶刃物
960-1801 福島県相馬郡飯舘村草野字太師堂113-37
TEL:0244-42-0333

後援:飯舘村

村上瑞恵

レギュラーライター /編集・ SNS担当

村上瑞恵

地に足のついた生活がしたいと、2006年に都内から福島県にIターン。パソコン通信時代からのPCユーザーで、サイト運営やSNS運用などデジタル方面にわりと強いガジェットおたく。地域のICT化推進事業に携わったのち、Web制作会社で観光情報サイトの編集やSNSを活用した販売促進・ファンづくりを担当し、2022年9月に独立。休みの日はカメラ片手にバイクや車で出かけている。

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