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福島で唯一! 5年ぶりに再開された「お香会」で日本の雅に触れてきました
春の情景をテーマとした「桜香」で春爛漫
こんにちは。観光ノート編集部・横山です。
4月14日、福島市森合の極楽寺で香道御家流霞月派 妙香会が主催する「一般公開 春のお香会」が開催されました。
お香会とは、香(こう)の香りを楽しむ会のこと。京都や東京で開かれている印象がありますが、福島市でも催されているんですよ。
コロナ禍を経て約5年ぶりに開催された福島唯一の「お香会」、その様子をレポートします。
福島市内を一望できる「極楽寺」でお香会を開催
福島駅東口より徒歩約25分、車で約10分の場所にある「高野山 真言宗 極楽寺」は、1930年開山、1953年に福島市内を一望する信夫山の中腹に伽藍が建立されました。
2019年以来約5年ぶりに開催された春のお香会は、ソメイヨシノが見頃を迎えた「花見山公園」や「大森城山公園」などを望む極楽寺の宝珠庵という最高のロケーションで行われ、県内外から約130人が参加しました。
「お香会ってどんなことをするの?」「礼儀作法がわからないけど参加しても大丈夫?」と思われるかもしれませんが、一般公開された今回のお香会は初心者大歓迎。香道のルールやマナーがわからなくても見よう見まねで楽しめました!
和装の女性もたくさん参加されていましたが、私はブラウスにスラックスの出で立ち。服装に特に決まりはなく、カジュアルすぎない格好であればよいそうで、女性はひざ下丈のスカートだと足が楽だと思います。
室町時代に成立した「香道」とは?
「香道」とは室町時代に成立し、東南アジアなどで産出される沈香などの貴重な香木の香りを鑑賞する芸道。
香道は自分の内面を磨くことで精神・心を豊かにさせる芸道で、和歌や漢詩、俳句の知識や礼儀作法、書道を学ぶきっかけになるため「総合芸道」ともいわれています。
香道では香りを嗅ぐことを「聞香(もんこう)」といいます。「聞酒(利酒)」と同様、集中して味わうため「聞く」という表現になります。
「組香(くみこう)」と呼ばれる香遊び
組香(くみこう)とは、何種類かのお香を聞いてその違いを聞き分けて当てる、ゲーム性を持った楽しみ方の一つです。
今回は、春の情景をテーマにした組香「桜香(さくらこう)」が行われました。
組香では和歌(証歌と呼ぶ)を主題とします。今回の組香では古今和歌集から紀貫之の和歌を証歌として、始めに「試香(こころみこう)」を聞きました。
「試香」とは、香りを記憶するために最初に聞く香のこと。和歌のキーワードである香木「桜花(伽羅・きゃら)」と「白雲(真南蛮・まなばん)」の香りを覚えました。
証歌
桜花 さきにけらしな あしひきの 山のかひより 見ゆる白雲
(桜の花が咲いたようだ。遠くに見える山にかかる白い雲は、桜の花だろうか雲だろうか)
続いて「本香(ほんこう)」にて、試香で聞いた二包から一包のみが炷(た)かれ、覚えた2つの香りのうちどちらが出たのかを当てます。
参加者全員が静寂の中、鼻に全神経を集中させてスースーと深い呼吸で香りを聞き分けました。聞き分けたら手記録紙に答えを記入します。
ドキドキ緊張の瞬間。組香の答え合わせ
組香の答えは「桜花(伽羅)」の香りでした!
香木の伽羅も真南蛮もどちらも甘い香りがしましたが、伽羅の方が甘みが強く、苦いような、木が焦げる香りがしました。「サウナの匂いがした」という声も。
香木は伽羅(きゃら)・羅国(らこく)・真南蛮(まなばん)・真那賀(まなか)・⼨⾨陀羅(すもたら)・佐曽羅(さそら)の六種類あり、香りの特徴を甘、辛、苦、酸、鹹(しおからい)、無、の5つで表現します。
香木の原料は主に東南アジアで採取され、長い年月を経て香木になるため大変貴重なのだそう。
香木の大きさは2ミリ角程度の太さで1センチ弱程。とても小さい木片から深みのある甘い香りが漂いました。
床の間の飾りで震災復興への祈り
床の間には春らしい掛け軸や飾りがあしらわれ、能登半島地震の復興を祈り、輪島塗や九谷焼が飾られていました。
極楽寺では、定期的にお香会の一般公開やお稽古を行っています。
初心者でも参加できますので、公式ホームページから開催日をチェックしてみては。
私たち観光ノート編集部も、観光需要回復による能登半島地震からの復興を応援しています。