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心と舌で感じる贅沢なひととき「桃会席」~匠のこころ 吉川屋~
桃のフルコース誕生秘話
福島県産のフルーツジューススタンドや「もも神社」などフルーツの魅力が満載の宿、穴原温泉「匠のこころ 吉川屋」。全国でもめずらしい、桃をふんだんに使った創作料理「桃会席」を夏限定で宿泊者に提供しています。
吉川屋 畠正樹(はた まさき)社長の情熱が、秋田克志呂(あきた かつしろ)総料理長の巧みな技と融合し、地元特産品の魅力がさらに高まった「桃会席」の誕生秘話をお二人に聞いてきました。
「桃会席」はこうして生まれた
――そもそものはじまりは?
秋田さん)はじまりは、約1年前。社長の畠から「フルーツを使った料理を会席の中に取り入れられないか」という提案を受け、料理の中に桃を組み合わせる方法を考えていました。
畠さん)北海道に行けばカニ、九州に行けば博多ラーメンを楽しめるように、福島県にもお客さまが期待するイメージがあるはずです。福島県の統計データを調べたところ、温泉に次いで「フルーツ」が上位にランクインしていました。特に、福島県の県北エリアはフルーツの栽培が盛んな地域として知られています。
福島県を訪れた際にはフルーツと温泉地、そしてフルーツを存分に味わえる旅館といえば吉川屋というイメージを作りたいという思いから、秋田さんと話し合っていました。
桃のパフェやデザートなど、おいしいフルーツ料理を提供するお店はたくさんあります。しかし、吉川屋は他のお店とは一味違ったアプローチで、桃を使ったお料理を提供したいと考えていました。
秋田さん)桃会席というアイデアは、他のフルーツと比べても新鮮で斬新でした。桃はデリケートで、むくとすぐに色が変わって手間もかかります。どのようにモモの味や香りを最大限に引き出すか、どのような料理に組み合わせるかを、スタッフとともに試行錯誤する日々が続きました。
伝統と創造の融合を味わう
――桃が他の食材と比べて大変なことは?
秋田さん)桃の硬さ、柔らかさなどによって調理法が変わります。どの料理にどの状態の桃を組み合わせるかというのが一番大変ですね。例えば、お肉だったら一度火を入れる。お肉と組み合わせて焼くので硬めの桃を使うなどしています。
桃の甘み、酸味、これらを利用してどのような食材と合わせるか、これはやっぱり職人技なのかなと思います。桃と食材の組み合わせによって、食べたことがない食感になる。意外性があって、驚いてもらえて、感動してもらえる! そうすることでひとつの会席料理が仕上がるというのが、桃会席の楽しいところでもあるのかなと思います。「楽しんで食事をしていただく」というのが私のコンセプトなんですよ。
――畠さんは、桃の会席を最初に召しがったとき、どんな感想を持ちましたか。
畠さん)桃のおいしさに改めて気が付くといいますか、なんていうか桃は幸福感がありますよね。
色もそうですし、口に含んだときの食感や、独特の香り高さと甘さと、すごい幸福度が高い食べ物かなと思っています。会席の中で、桃がかたちを変えながらいろんな顔で登場して、幸福感を与え続けてくれるメニューだなと感動しました。
――桃会席は心行くまで桃を堪能でき、桃好きにはたまりませんね。
秋田さん)全部で約2個半の桃を使っています。特に、アンブレラ(傘)をイメージした締めの甘味には桃を半分も使っています。桃の周囲には麹のお味噌。生クリームとモモのジャム、さらに中には麹あんを入れています。それをナイフとフォークで召し上がっていただく。
会席の最初の段階は、桃のいろんなアレンジでこんな食べ方もあるんだと驚いていただいて、最後にそのままの桃の食感をお楽しみいただいています。
桃ってなんだかんだ言いながらも、やっぱり生が一番おいしいんですよ。
――旅館で、桃と意外な食材とのマリアージュを創作和食でいただく、まさに極上の非日常体験ですね。
桃会席を通して「物語」を紡いでいく
――今後の展開は考えていますか。
秋田さん)桃会席を通して「物語」を表現していきたいなと考えています。吉川屋や地域を感じ取ってもらえるようなストーリーを、会席を通して具現化していきたい。だから桃会席は、どんどんブラッシュアップして、来年はまた新しい感動を届けていきたいと日々奮闘しています。
畠さん)桃のフルコースを食べられるのは、世界でここだけかなと思いますので、ぜひ吉川屋でしか味わえない料理を召し上がりに来ていただきたいなと思います。
桃会席の誕生には、日本の食文化や地域への深いリスペクトと未来への想いが息づいていました。
匠のこころ 吉川屋の「桃会席」は、8月いっぱい楽しめる予定です。