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「チラシデザイン」佐藤昌栄さん × 第一印刷
エールプロジェクト事例 #1
福島市「ピンチをチャンスにプロジェクト」(通称「エールプロジェクト」)は、全国のフリーランスと市内事業者をマッチングして朝ドラ「エール」に関連する商品や販促物を作っていただくというもの。コロナの影響により予定より2ヶ月遅れの5月初旬からスタート、計33のプロジェクトが同時進行で行われ、6月末で終了しました。その中からいくつかの事例をご紹介していきます。
今回ご紹介するのは、株式会社第一印刷(福島市)の新企画「エールポスト」のチラシを制作した「ツールド・デザイン」(東京都世田谷区)代表の佐藤昌栄さん。佐藤さんは1972年福島生まれ。福島高校から多摩美術大学建築科に進み、一級建築士、インテリアデザイナーとして活動するうち、イラストやグラフィックデザインに仕事の領域を広げ、一つの場所に大勢の人が集まる「MANDARA MAP」という独自の手法を確立。今回もそのスタイルのイラストでチラシを制作されました。
6月末、対面指導のため来福した佐藤さんと、第一印刷ご担当者の蛭川敏さんに、オープンしたばかりの「古関裕而まちなか青春館」でお話を伺いました。
— 佐藤さん、今回はお疲れ様でした。お作りになったチラシを拝見しましたが、人物の描写が細かくて、エールファンにはたまらないですね。
佐藤:ありがとうございます。すべてウェブの画像検索で描きました(笑)。
— 佐藤さんは福島のご出身ということですが、古関裕而さんに関してどんなイメージをお持ちでしたか。
佐藤:正直、「昔の作曲家」というイメージしかなく、自分とはあまり関わりがないのかなと思っていました。でも、たまたま美大の受験科目に「建物の絵を描く」というのがあって、当時福島には変わった建物があまりなかったものですから、「古関裕而記念館」の絵を描いていたことがあります。何かご縁があったのかなと。
— 蛭川さん、今回の「エールポスト」とはどんなものなのでしょうか。
蛭川:エールポストは、福島市レンガ通りの古関裕而の実家「喜多三呉服店」があった場所の前のポストから手紙を投函すると特別な消印がつき、「エールポスト」からの手紙ということで、相手にメッセージとともに応援の気持ちも贈ることができるというものです。特別な消印については、まだ決定はしていないのですが、現在郵便局で前向きに検討していただいているところです。
— なるほど、ポストに人が集まることで、町の活性化にもつながりそうですね。
蛭川:そうなってくれたらと思っています。今回、福島が舞台の朝ドラ「エール」が放映されていることはとても素晴らしいことですが、何かしらドラマのレガシーを残していかないと、ドラマが終わったら何もなくなってしまうのはもったいないと。そこで、古関裕而さんと金子さんが文通で結ばれたということに着目し、「手紙」と「エール」を結びつけたこの企画を考えました。
— フリーランスの方にはどんな仕事内容を期待されていましたか。
蛭川:まずはこの企画を周知させなければならないのですが、自分たちで作ったチラシではいまひとつ伝わらないなと思っていました。今回のエールプロジェクトでは東京で実績のある方をご紹介していただけると期待していました。
— 佐藤さんは、エールプロジェクトを何でお知りになったのですか。
佐藤:高校の同級生が「こういうのあるからやれば?」と教えてくれました。福島には母がいるので、仕事があると帰りやすいということもあったし、故郷でこういった文化的なことに関わりたいという気持ちもありました。
— 「エールポスト」の仕事が来て、最初どんな感想を持たれましたか。
佐藤:最初は何をしていいかわからなくて。ポストに絵を描くのかな、でもそれって難しいんじゃないのかな、とか。でも初回のズーム会議で第一印刷さんとお話して、エールポストを周知させたいということがわかって、ではチラシでも作りますか、ということになりました。
蛭川:ズームの打ち合わせで佐藤さんから「こういうイメージもあるんじゃないか」と今回のご提案をいただきました。現代のレンガ通りに「喜多三呉服店」があって、その前にいろんな人が行列をなしている、という発想がすごく面白くて、良い意味で期待を裏切られました。自分たちがやろうとしていることをそのまま表現していただけたなと。
— 佐藤さんは、制作でご苦労されたことはありましたか。
佐藤:ありません。のびのびやらせてもらったと思います(笑)。
— ご自分で気に入っているところは?
佐藤:人物がみんな「ほどほど似ている」というところですね。あと、手紙を出そうとしている人のところで、古関裕而さんの業績を表現できたことでしょうか。オリンピックの聖火ランナーとか。
蛭川:あれは円谷選手ですよね。
佐藤:いえ、柔道の野村忠宏さん。2020の聖火ランナーです。
蛭川:そうでしたか。てっきりマラソンの円谷選手だとばかり…
— たしかに、この「まちなか青春館」には円谷選手の東京五輪のユニフォームが展示してありますしね。蛭川さんはどこがお気に入りですか。
蛭川:やはり古関裕而さんとその家族、その脇の三郎おじさんでしょうか。そして、行列をなしている人たちがみなゆかりのある人だというところがうまいなあと。ザ・ピーナツもいましたし。
— 佐藤:コギャルみたいな感じで(笑)。
— なんだか楽しくて、チラシだけではもったいないですね。
佐藤:どうぞ使い回してください。パスデータなのでバラバラにできるようになっています。
— 第一印刷さんは、これからどんな展開をされていきますか。
蛭川:まずは作っていただいたチラシをたくさん作って、この企画を多くの人に知ってもらうことです。そしてこのポストから手紙を出してみようと一人でも多くの方に思っていただけるようにしたいです。
— とても楽しみです。佐藤さん、蛭川さん、ありがとうございました。
(取材日:6月26日)