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フードロス削減や貧困問題に取り組む全国注目の店「BLTカフェ」

震災を経験した「ふくしま」だからこそ

愛すべきインフルエンサー「ハグさん」の店

社会的課題に取り組む事業者さんは、福島市にもいくつかあります。
今回は、フードロス問題、貧困支援問題などに積極的に取り組む「BLTカフェ」さんをご紹介いたします。

創業者の故・吉成洋拍(よしなり・ひろはく)さんは、ニックネーム「ハグちゃん」の愛称で老若男女問わず親しまれる存在。飲食や理美容店を経営する事業家という顔を持ちつつ、さまざまなイベント活動、支援活動を展開し、東日本大震災の時には地元の飲食店仲間と避難所で炊き出しを行い、各地域の住民との交流の輪を広げていった、地元ではとても有名な方でした。

そんな吉成さんは2021年5月、49歳の若さで皆に惜しまれつつ永眠されました。

吉成さんが最後に手がけた店となったBLTカフェでは、「ペイフォワード」と「みんなの食糧庫」という全国的にも珍しい取り組みを行っており、全国からも視察が訪れるほど。

どんな取り組みなのか、店長の一條りかさんにお話を聞いてきました。

BLTカフェはこんなお店

NYスタイルのハンバーガー専門店 BLTカフェは2018年9月にオープンした、ハンバーガーレストランで、吉成さんがBLTカフェにイメージしたのは「NYの大通りから1本離れた路地にあるカフェ」。

 

BLTカフェ店内

BLTカフェ店内

内装だけでなくハンバーガーにもこだわりを持っています。

一條さん:
福島県産のオーガニックエゴマを練り込んでいる自家製バンズは、毎日お店で焼いています。
ハンバーガーはNYスタイル。バンズのカット部分をカリっとトーストすることで、食感がよくなるんですよ。

一番人気のオーナーズバーガー。リピーターファンが県外からも訪れるんだそう。

一番人気のオーナーズバーガー。リピーターファンが県外からも訪れるそう。

積極的に障がい者を雇用

吉成さんは障がい者雇用に強い想いがあり、積極的に採用し、『ハンディキャップワーカー』という言葉を作りました。「障がいを持っていても楽しく努力しながら働く」を掲げ、それぞれが長所を生かしながら働いています。

一條さん:
オープン時からの吉成の強い想いで、現在も障がい者雇用を続けています。BLTカフェは、福島市障がい者雇用推進認定企業第7号に認定されています。

店を拠点に、様々な取り組みに挑戦

ほかにも、後ほどご紹介する「ペイフォワード」、「みんなの食糧庫」をはじめ、「BLT子ども食堂」を開催するなど、思いやりと感謝にあふれた「ありがとうの街ふくしま」を目指して取り組んでいました。

吉成さんが亡くなった今、店長の一條さんをはじめスタッフの皆さんが、吉成さんの思いをしっかりと引き継いでいます。

店内で吉成さんとの思い出が飾られたコーナー

店内で吉成さんとの思い出が飾られたコーナー

「恩送り」ができる仕組み「ペイフォワード」

購入済みのカードとメッセージが貼られたコーナー

購入済みのカードとメッセージが貼られたコーナー

ペイフォワードとは

「ペイフォワード」のキーワードは「恩送り」。
顔も知らない誰かのために食事代を先払いし、そのカード(先払いされた食事代)を使って、誰でも無料で食事ができるシステムです。

ペイフォワードの仕組み

ペイフォワードの仕組み

本当に支援を必要とする人に届けたい

「ペイフォワード」をはじめたのは、吉成さんが生前支援していた児童養護施設職員の方との会話がきっかけでした。
その施設は、様々な事情で保護者と一緒に暮らせない子どもたちが生活をしている施設。吉成さんは、入所している子どもたちを「かわいそう」と思っていました。でも職員さんは「ここにいる子どもたちは幸せなんです」と言います。

「この施設の子どもたちは、今は保護されて安全な場所にいます。衣食住は守られ、面倒を見てくれる大人もそばにいます。でも世の中には、危険にさらされ、ご飯を食べることもままならず、孤独におびえながらも、まだ見つけてもらえずにいる子どもたちがたくさんいます。そんな子どもたちこそが『かわいそう』なんです」

その言葉に吉成さんは大きなショックを受けたそうです。
そして2020年2月、BLTカフェで「ペイフォワード」をスタートしました。

一條さん:
たくさんの利用者さんの中で特に印象的だったのは、女子高生3人組のエピソードです。
彼女たちは、1人1枚カードを利用して無料で食事をしました。そのあと、1人200円ずつ出し合って600円分のカードを購入していただきました。
「私たち高校生でお金がないのですが、このシステムに感動して、少しでも恩送りをしたくて…」
その場にいたスタッフ全員が、とても感動したことを覚えています。

恩送りをしたい人はこのカードを購入しよう

恩送りをしたい人はこのカードを購入しよう

スタートから約2年、これまでに約80万円分の購入があり、そのうち70万円以上の利用があったそう。

一條さん:
2021年の間にたくさん購入していただき、現在カードのストックがある状態です。必要な方へ情報が届き、利用していただけると嬉しいです。

気軽に利用できて社会課題も解決「みんなの食糧庫」

「みんなの食糧庫」の棚と冷蔵庫

「みんなの食糧庫」の棚と冷蔵庫

みんなの食糧庫とは

「みんなの食糧庫」では、お店の外に冷蔵庫と棚を設置しています。自宅で食べきれない食材や、家庭菜園で食べきれない野菜などを自由に置くことができ、それらを自由に持って帰ることができる仕組みです。

みんなの食糧庫の仕組み

みんなの食糧庫の仕組み

一條さん:
ただ困窮家庭を支援するだけではなく、余った食材を無駄にしない「フードロス削減」も目的のひとつです。
このコロナ禍で家庭菜園をはじめられた方も多く、「作りすぎて食べきれない」というご家庭もあるようで、そんな方にも気軽に寄付していただいてます。

きっかけは1件のニュースから

「みんなの食糧庫」をはじめたきっかけは、生前吉成さんがたまたま目にしたワールドニュースでした。
NYの路上にある冷蔵庫には、誰かが善意で寄付してくれたものが入っていて、誰でも自由に持ち帰ることができる、という内容。
そのニュースを参考に、2021年2月からBLTカフェでも「みんなの食糧庫」をスタートしました。

この日は冷蔵庫に砂糖とゆであずき缶が入っていた

この日は冷蔵庫に砂糖とゆであずき缶が入っていた(16時頃)

いつでも誰でも利用OK

「みんなの食糧庫」はお店の外に設置しており、食糧を寄付するのも、持って帰るのも自由。BLTカフェスタッフも知らないうちに、日々物が増え、減っていきます。

一條さん:
ひとつ嬉しかったエピソードがあります。いつもは「持っていく」側の女性がいらっしゃいました。
スタッフとも挨拶を交わすなど親しくなってきたころ、両手に抱えきれないほどの「ほうれんそう」を持ってきてくださいました。
「素人の私が作ったものなんだけど…こんなものでもいいのかしら…」と。
支援される側だった方が、支援してくださる側になった、嬉しい瞬間でした。

現在、「みんなの食糧庫 」を利用している正確な人数はわかりませんが、毎日棚や冷蔵庫の中を確認にきて持って行く人、定期的に食材や日用品を持ってきてくださる方など、様々なんだそうです。

一條さん:
現状の課題は、一度に大量に持って行ってしまう方など、「ひとりじめ」も見受けられます。「おたがいさま」の精神で、必要な分だけ持って行ってくださると嬉しいです。

関西や首都圏からも視察が

「ペイフォワード」や「みんなの食糧庫」、「BLT子ども食堂」なども含めたBLTカフェの取り組みは、全国的にも注目されています。
東京や大阪、岡山、京都、滋賀などから視察に訪れ、帰った地で吉成さんの想いを継ぎたいと、「みんなの食糧庫」をはじめた団体もいらっしゃるんだそうです。

一條さん:
吉成と縁のあった方をはじめ、個人の方や団体、地方議員さん、吉成が副理事長を勤めていたNPOのプロジェクト参加校の学生たちなど、たくさんの方が来てくださり、私たちの活動を広めてくださっています。

はぐ(吉成)さんの9つのキーワード

はぐ(吉成)さんの9つのキーワード

一條店長からのメッセージ

最後に、BLTカフェ店長の一條さんにBLTカフェの取り組みに興味のある方へのメッセージをいただきました。

一條さん:
「みんなの食糧庫」は誰でもどこでも始められます。作り過ぎた家庭菜園の野菜を「みんなの食糧庫」に置くことも、フードロス削減につながります。
「ペイフォワード」は、飲食店に限らず、いろんなお店ではじめられます。善意の橋渡し、「恩送り」を間近で感じることができるステキな仕組みです。この仕組みに賛同する事業者を増やし、福島県内100店舗で実施してもらうことが今の目標です。
あの震災を経験した「ふくしま」だからこそ、「おたがいさま」の精神のもと、「悲劇の街ふくしま」ではなく、思いやりと感謝にあふれた「ありがとうの街ふくしま」になっていくことを願っています。

まとめ

BLTカフェの取り組みは、オーナーの吉成さんが亡くなられた後も、たくさんの方にその想いが引き継がれ、続いています。
この取り組みに賛同される事業者さんや団体さんが増え、必要な方に支援が行き届く「ありがとうの街ふくしま」になっていくことを、私も願っています。

店舗情報

住所 福島県福島市泉道下19-7
 TEL 024-563-5018
営業時間

11:00〜19:00(Lo18:30)
19:00〜完全予約制営業

定休日 月 ※月曜祝日の場合、翌火曜日定休
駐車場 あり
テイクアウト 可能
混雑時間帯
HP・SNS

HP

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備考  

 

齋藤幸子(さいとうゆきこ)

レギュラーライター

齋藤幸子(さいとうゆきこ)

2010年に福島市に転入。WEB制作会社→銀行窓口業務→大学広報補佐を経験。2児の子育てをしながら、2019年より「福島に移住・転入した女性が、福島の暮らしの情報を発信するサイト tenten」でライター活動をはじめる。現在はフリーライターとして各種WEB媒体で執筆中。主に地域情報や生活情報の発信を行ってきたが、観光ノートのライターになり取材記事の沼にハマる。写真撮影、画像編集、マップ作成なども行う。

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