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学生も対象「市民コンシェルジュ」募集開始!観光案内所の仕事の魅力とは?スタッフに聞いてみました。
市民とともにつくる「ふくしまの玄関口」のこれから
福島市観光ノート編集長の熊坂仁美です。先日の「観光ノート編集チーム」のご紹介に引き続き、今回はJR福島駅西口2Fの「福島市観光案内所」についてご紹介したいと思います。観光ノート同様、案内所も「DMO 福島市観光コンベンション協会」が運営しており、協会スタッフと外国語対応可能な「市民コンシェルジュ」という二つの職位があります。さらに今回、高校・大学生を対象とした「コンシェルジュ・ジュニア」が加わります。
本日より「多言語市民コンシェルジュ」第2期および「市民コンシェルジュ・ジュニア(高校/大学生)の募集を開始いたしました。詳しくは文末をご覧下さい。
「窓口業務的な案内」から「おもてなし交流拠点」へ
JR福島駅2Fの福島市観光案内所は、西口改札の真ん前という案内所として最適な場所にあり、スペースも広々。市内おすすめスポットの展示や、各種マップやパンフレット、イベントチラシなどを取りそろえているほか、ももりんグッズなどのお土産品コーナーも人気です。
そして何より、メインのサービスは福島を知り尽くしたスタッフおよび多言語対応の市民コンシェルジュによる旅のガイド。常に3名ほどが常駐し、山岳観光都市「デンバー」のスタンディングスタイルで、来店された方にフレンドリーにお声がけし、ご希望に合わせた案内やご提案、宿泊施設などの手配も承っています。
「お客様に最高の旅の体験をしてほしい」という想いでスタッフが接客を続けて行くうち、ご案内をしたお客様が帰りにわざわざ立ち寄り、「案内してくれたところ、とてもよかった、ありがとう」「あの店美味しかったよ」など気軽にお礼や感想を言いに来てくれることも本当に多くなったといいます。
実は、案内所が今の形になったのは2019年3月、ちょうど3年前でした。
それまでこの場所は福島市観光コンベンション協会の事務所を兼ねており、事務スペースの横に案内用のカウンターが置かれている、銀行や役所によく見られるレイアウトでした。事務スペースが大半を占めていたため案内カウンターや展示スペースに限りがありました。
案内業務の後方で職員が通常業務を行っていた以前のレイアウト
そして3年前、TOKYO2020をきっかけに「市民と共に作るおもてなし交流拠点」を目指し、改札前という好立地を活かし「ふくしまの玄関口」として発信力を高めようと全面リニューアル。事務所部分は市内五月町に移転し、スタッフと市民コンシェルジュによる対話型の案内所に生まれ変わりました。
「リニューアル後にお客さんから『変わったねー、全然違うね』と声をかけられたのがうれしかったです」(松本さん)
「接客も以前は話しかけられたら対応する形で、それも聞かれたことに対して答えるだけでした。画一的で、お客様主体とは言いがたい状態でした。今はこちらからお客様に話しかけてアプローチします」(横山さん)
「運営も大きく変わりました。自分たちで考えて案内所の配置を換えたり、展示物を変えたり、楽しみながらさせていただいています。以前は事務的で、制作物などもせいぜいパンフレットラックにイラストをつける程度でした。今はそれぞれ知恵を出し合いながら、大変ではあるけれど 達成感があります」(柳沼さん)
スタッフのアイデアによる展示の数々
展示物で最近人気なのが、入り口に設置されたタッチパネル式の「ふくしま方言クイズ」。
タッチパネルはこれまでもありましたが、いまひとつ活用できてませんでした。そこでスタッフ柳沼さんのアイデアで「方言クイズにしよう」ということになり、福島弁のネイティブスピーカーの二瓶所長に「福島弁辞典」から問題を選ぶのをお手伝いしてもらい、クイズを作成。コンシェルジュさんにも協力を得て反応を確認しながら作り込んでいったとのこと。
「おかげさまで『方言クイズ』はとても評判がいいです。観光客だけでなく県内の方も挑戦されていきますね。大人はもちろん、小さいお子さんがお母さんと一緒にいらしたり。全問正解するとミニ賞状と福島弁辞典をお渡しするのですが、みなさんとても喜んでくれるんです」(柳沼さん)
資格取得助成制度とそれを活かしたコンテンツづくり
方言クイズと同時にリリースした「おすすめ日本酒診断テスト」も好評で地元新聞にも取り上げられました。これは、コロナによる自粛期間を活用し、協会が「自律的学習に関する助成金支給」プログラムを実施。希望者は仕事に役立つ資格取得を申請し承認されれば講座費用の補助が受けられるというものでした。
この制度を利用し、多言語市民コンシェルジュの久保木信子さんが「日本酒マイスター」を取得。同じく日本酒好きの横山サブリーダーらと協力して作成したのがこのパネルです。お客様の評判もよく、気軽にチャレンジしてもらえるとのこと。
お客様と会話をすることの大切さ
横山さんは3才のお子さんを子育て中。育休を経て職場に復帰しました。「今は『イヤイヤ期』に入って大変ですが、熱を出した時など皆さんが気を遣ってシフトを変わってくれたり、とても働きやすい職場です」とのこと。
子育てしながらこの仕事を続ける魅力は?
「主に首都圏からのお客様が多いですが、旅行中にこんないい人と出会って道案内してくれた、など報告してくださるんです。福島市は有名観光地ではないけれど、改めてこの町の『人の魅力』に気づかされています。お客様は事前に観光ノートなどを見て情報を得て来る方も多いんですが、リアルの人の部分が介入すると、その情報が定着するというか、より好きになってくださると思います。何気ない会話に思えても、それでも私たちとの会話でお客様の旅行体験が豊かになっていくんだなあと思うと、会話しながら案内することの大切さとやりがいを感じます」と横山さん。
「コンシェルジュさんのおかげで外国人の接客に自信がついた」
勤務9年目の松本幸枝さんは、語学が苦手で外国人の方とは全く話せなかったそうですが、コンシェルジュさんたちの影響で、今では臆せず話しかけられるようになったと言います。
「コンシェルジュさんたちの接客は本当に勉強になります。あんなふうに、外国人の方と普通に話していいんだ、と驚きました。自分もやってみると、単語とジェスチャーだけでも意外にわかってくれる。わかってほしいという気持ちが大事なんだということを知って、相変わらず英語はできませんがもう怖がらなくなりましたし、自信になりました」と松本さん。
スタッフの国際化にも影響を与えている「多言語コンシェルジュ」とはどんな仕事なのでしょうか。
多言語コンシェルジュのお仕事
リニューアルと同時に始まった「多言語市民コンシェルジュ」制度は、国内外からの来訪者に「ふくしまファン」になってもらうため、多様な言語を得意とする市民と協力した観光案内サービスです。ABCの時間帯で3時間づつのいわゆるワークシェアリングを採用、希望の時間を考慮しながら勤務ローテーションを組んでおり、短時間の従事を希望の方でも参加できます。
この制度に最初から参加しているお二人に、この仕事について伺ってみました。
「主に仕事関係で福島に来て、町のことがわからなくてという方に滞在のサポートをしてさしあげてました。印象に残っているのは南米からのお客様で、一目でこの方はスペイン語かな、というのがわかるので、スペイン語で話しかけると最初びっくりされましたが、とても喜んでくれました。最近は在日の外国人のかたが多いので、英語で話しかけても『日本語で大丈夫です』と言われてしまいます(笑)」(モレノさん)
「コロナ前は花見山の時期には海外から東南アジアを中心に外国の方がたくさん来てくれました。たいていの方は英語がおわかりになるのでバスをご案内します。穴場の桜のスポットも聞かれるので、桜づつみ公園や信夫山などをご紹介していました。お仕事で来られた方でも、花スポットを回ると家族を連れてまた来たいと言ってくれます。それと果樹園は人気ですね。桃を自分で収穫できる、というのは外国にはあまりないらしく、福島の大きな魅力だと思います」(金井さん)
案内所の仕事の魅力は?二瓶所長に聞いてみました
2020年1月に所長に就任した二瓶佐知子さん。アパレル販売など20年にわたる接客経験を持ち、「生粋の福島弁を聞きたい方はこの方に話しかけて」というぐらい福島ネイティブな女性です。
熊坂:二瓶さんはアパレル販売の経験が長かったということですが、観光案内所とはまったく違う業界ですよね。
二瓶:でもすごく似てるんですよ。お客様が何を求めているか、必要な情報を得てお客さんが行きたいところを提案する、というのは洋服と同じです。いろんな気持ちをお持ちのお客様に寄り添って、求めるものを伺って、一緒になって考える。ファッションコーディネートと同じなんです。
熊坂:なるほど。
二瓶:「自分を売る」のが大事なのも似ています。自分の特別を出すことでリピーターになっていただく。案内所の場合は帰りにも寄っていただけるようになります。「あそこにいったらなんとかなる」と頼りにされる場所でありたいと思っています。
「ネットから離れたい」という人も
熊坂:今はスマホで宿泊予約も旅行プランも立てられますが、案内所に来る方はやはりネットが苦手な方が多いのでしょうか。
二瓶:以前は確かにそういう感じでしたが、最近はちょっと違っていて、「ネットから離れたい」という理由で訪れる人も増えています。
熊坂:それは意外ですね。
二瓶:あるお客様はキャリアウーマンで、自分でいくらでも手配ができてしまうのに、したくない、あえてアナログな旅をしたい、という理由で案内所で手配をお任せしたいといらっしゃいました。そういうことも会話しないとわからないことで、話をして何を求めているのかを感じることが大事だと思います。ネットで取れなかった宿が、電話だととれたりすることもありますし。
熊坂:あ、それはメリットありますね。
お客さんの人生の1ページに加わらせてもらえる仕事
熊坂:これまで印象に残ったお客様について教えてください。
二瓶:たくさんありましたが、ご主人が末期ガンという関東からのご夫婦のことは忘れられないです。奥さんはお元気ですが、ご主人は体調も悪そうで、言葉も悪くて当たりっぱなしで、「秋田まで行ってやるっていうのに、こいつはこんなところで降ろしやがった」って感じで。きっと身体がお辛くて、もどかしいんだろうなと思いました。「福島なんかいったい何があるんだ」とおっしゃるので、福島にはいい温泉がたくさんありますよ、と。
熊坂:どちらの温泉をおすすめしたんですか。
二瓶:実はご主人の聞こえないところで奥様が私に「この状態では秋田にはとてもいけないので、福島でアクセスのいい宿を手配してほしい」とお願いされたんです。なのでご主人には、「飯坂温泉のこんないい旅館に泊まったら、奥様も感謝するんじゃないですか。私だったらいい旅だった、と思うと思います」と申し上げました。するとご主人もすっかり機嫌が直り、「いいじゃないか、じゃそこへ行こう」と。すぐに手配をさせていただきました。
熊坂:二瓶さんらしい、素晴らしい案内ですね。
二瓶:いえ、自分の勉強不足を感じました。もっとできたんじゃないかな、もっといい案内ができたんじゃないかな、という思いも残りました。
どんな元気な人でも、もしかしたら次の日に亡くなるなんてこともあるかもしれない。自分たちの対応で旅の体験が変わるのだとすれば、気分よく送り出してあげて、最高の旅行、最高の思い出にしていただくのが私たちの仕事だと。
熊坂:素敵なお話、ありがとうございます。今回、新たにコンシェルジュの募集が始まりますが、二瓶さんのおすすめポイントを一言で。
二瓶:接客を通してお客様と感情を共有できるって、素敵なことだと思います。サービスや人と関わる仕事をこれまでやったことのない方でも、自分の人生の選択肢のひとつとして考えてみてもいいのではないでしょうか。
市民コンシェルジュを新規募集
▶「多言語市民コンシェルジュ」(第二期)
コロナ明けに来訪が本格化するであろう外国人観光客と触れ合いたい方、語学や接客技術を磨きたい方、子育て中の合間時間を有効活用したい方などにとても貴重な機会です。ふくしまの玄関口として「福島にまた来たい」「あの人にまた会いたい」と思っていただけるよう、一緒に福島の魅力を発信していきましょう。
「いろんなお客様とのふれあいができる職場で感謝される仕事です。地元の人しか知らないコアな情報をお伝えしたり、広く福島を楽しんでいただいて楽しんでいただくお手伝いをすることで地域貢献ができます。責任重大だけれどやりがいもある。ぜひ一緒に私たちと働いてみませんか」(柳沼さん)
▶これからの観光産業を学ぶチャンス〜「市民コンシェルジュ・ジュニア(CJ)」
今回は、「多言語市民コンシェルジュ」に加えて新たに高校・大学生対象の「市民コンシェルジュ・ジュニア」も募集します。
観光産業は、今後国内主要産業のひとつに成長すると言われています。その中にあって「DMO(Destination Management Organization/観光地域づくり法人)」にはマーケッター、データサイエンティスト等をはじめとする優秀人材が集い、人口減少で悩む地方都市の活性化を中心的に担うようになると言われています。
当案内所は、徹底した対面交流型の観光案内を大切にしながら、同時にデジタル技術を多用した観光案内も展開するなど、観光産業の少し先の未来を学ぶ絶好の場所。急速なデジタル化が進む観光産業の実情を学びながら、私たちと一緒に『地域貢献(=ふくしまファンづくり)』にチャレンジしてみませんか。
(1月22日更新)「利き酒師」の通信講座で学んでいた松本幸枝さんが見事合格しました。早速、タッチパネルに「地酒のヒミツ」コンテンツを追加。「日本酒にまつわる素朴な疑問を掲載し、お酒を飲まない方にも豆知識として楽しんでいただけるようにしました」とのこと。ぜひ、挑戦してみてくださいね。