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「こけしは人生」土湯の伝統こけし工人・陳野原 幸紀さん
土湯こけしの新作が、福島市ふるさと納税返礼品に追加
土湯温泉は、清流荒川沿いに佇む古くからの温泉街で、磐梯朝日国立公園内に位置し、豊かな自然と街歩きの両方が楽しめることで人気があります。
この土湯温泉で江戸時代から作り継がれている「土湯こけし」は、遠刈田、鳴子と並ぶ「三大こけし」の一つに数えられています。木のぬくもりと素朴なかわいらしさで全国に根強いファンも多く、土湯温泉のみならず福島県を代表する伝統工芸品です。
このたび、土湯こけしの第一人者・陳野原 幸紀(じんのはら ゆきのり)さんの手による新作こけしが、福島市のふるさと納税返礼品に登場しました。
そこで陳野原さんに、土湯こけしについて、そして制作にかける想いを伺いました。
【追記】
2024年8月31日、9月1日に行われた第69回全国こけし祭りコンクールにおいて、陳野原幸紀さんが最高賞の「全国こけし祭り会長賞・文部科学大臣賞」に輝きました。
福島民報社の記事には「『粂松の魅力を十二分に発揮しながら、これだけ衒(てら)いも作為も見せない作品には驚きを禁じ得ない』との評価を受けた」と書かれています。おめでとうございました。
目次
返礼品のこけしについて
今回返礼品に登場するのは、土湯こけしの伝統を活かしながら、新たなチャレンジとして取り組んだ意欲作。
細部までていねいに仕上げられた「ひな人形」、くり抜かれた胴からやわらかな灯りが漏れる「スタンドライト」、ダイナミックな動きで遊び心あふれる「メリーゴーランド」の3種類があります。
陳野原さんは「伝統を守ると同時に、意外性を楽しみたい」と語ります。
——今回返礼品として作られるこけしはどのようなものですか?
スタンドライトは、もともとはアメリカの方からこんなものがほしいという問い合わせがあって作ったものです。灯りを点すと、頭に被っている赤い傘の内側に光が反射してとても綺麗なんですよ。反射も計算した上で、大きめの傘にしています。胴の部分も手で掘り上げるため加工は大変です。
メリーゴーランドは、回転させるという今までにない作りのこけしで面白さがあるでしょう? 小さなこけしが集まって支えているようなデザインは、私のオリジナルです。
ひな人形は、伝統こけしには使わない絵具を使用しています。赤い着物には金を、藍の着物には銀を混ぜているので、落ち着いた深い輝きがあります。昨今の家の事情に合わせて、お内裏様とお雛様の2体にしています。
——最近は外国の方にもこけしが人気だそうですね
コロナ前、インバウンドが盛んになってきた頃から外国の方、特にアメリカや韓国の方に人気ですね。ただそれ以前から熱心に蒐集している人はいました。おかっぱ頭や切れ長の目など、日本的な姿が人気のようです。
面白いのは、外国の方は大きなこけしを選ぶ方が多いこと。あと、胴に「南妙法蓮華経」などと漢字が書かれたこけしは日本の方はまず手に取らないのですが、外国の方には好まれるみたいだね。
こけしの歴史、土湯こけしの特徴
伝統こけしは温泉地や山間部に多く、木地師(きじし:山で木を挽きお椀や皿などを作ったり、炭焼きを行っていた人たち)が生活のために、湯治場の土産物や子供の玩具として作り始めたのが始まりといわれています。
こけしは東北6県に、大きく分けて11系統が存在します。各地でさまざまな呼び方をされていて、岩手のほうでは「きなきな」、土湯では「でこ」「でく」「きぼっこ」というように20種類以上の呼び名があったのですが、昭和15年に「こけし」という名前に統一されました。
——こけし文化は東北地方にしかないと聞きました
木地師の存在や、冬は寒く雪が多い東北の風土、そして湯治場であるという土地柄が影響しているのではないかな。
湯治場で木賃宿を営んでいた人たちも炭焼きをやっていて、それらの仕事の片手間にこけしを作っていたようです。こけし作りは木地師の遊び心というよりは、一番はやっぱり食っていくためだったんだろうなあ。
——伝統こけしは11系統あるそうですが、土湯こけしの特徴はどんなところですか?
土湯こけしは、江戸時代の1835年頃から作られるようになったといわれていて、特徴は、頭に描かれた黒一色の蛇の目模様、鯨目(くじらめ)と呼ばれる切れ長の目と、おちょぼ口、あとはカセと呼ばれる赤い髪飾りが描かれるところ。
頭は小さく、胴体も細めで女性的なバランス、胴体はろくろ線という横縞模様で彩色しています。頭部と胴ははめ込み式で、首を回すと「キイキイ」って音が鳴るところも特徴だね。首が鳴るのは土湯と鳴子だけです。
こけしって面白いもので、蒐集する人がいるわけ。「こけし会」という蒐集する人たちの集まりもあって、それだけ奥が深いというか、魅力があるんだろうね。
どこかに行ったときの記念に1本ずつ買い集めてくっていうのが、こけしの本来の集め方で、昔は「作り手のところに行って、その人とお話しながら買いなさいよ」と言われていました。作り手の顔が見えると、一層愛情も湧くじゃないですか。
こけし作りのスタートは、意外な出来事がきっかけ
土湯こけし工人組合の組合長を長く務めた陳野原さんは、現在76歳。土湯のこけし作りと、東北各地のこけし工人たちの繋がりを「美轆会(みろくかい)」として牽引してきました。今年、令和5年には鳴子で行われた「全国こけし祭り」において国土交通大臣賞を受賞し、過去には東北経済産業局長賞なども受賞しています。
そんな陳野原さんがこけし作りを始めたきっかけは、意外なことからでした。
——プロフィールに「こけしを作り始めたきっかけは、スキーで足を骨折したから」だったと
足の骨を折って動けなかったとき、ちょうど土湯に、足を使わずに手でこけしを削ることのできる機械を持っている人がいたんですよ。それを借りて削り始めたのがスタートです。兄が工人としてこけしを作っているのをずっと見ていたしね。
昭和46年から修行を始め、49年にこけし工人になりました。3年間修業しないと工人になれないんです。
目が二重のこけしは珍しいでしょう? 兄は「粂松(くめまつ)型」と呼ばれる伝統こけしの型に倣っていて、私も同じです。粂松型は、二重まぶたと、富士山のような山を描いた口元が特徴で、これらを見ればすぐわかります。
一番重要なのは「バランス」
面白くてね、こけしを3本並べてそこから選んでくださいというと、たいてい作った自分が「これが一番いい」というものとは違うほうを選んでいく。そういうもんだよね(笑)
——好みは人それぞれなんですね。ちなみに「こけしの良さ」はどこを見るのですか?
こけしで一番重要なのは、バランス。
まずひっくり返して背から見て、頭と胴のバランスがいいかどうか。そしてまたひっくり返して今度は顔を見る。これはこっちがかわいいな、あっちがかわいいいなと思うじゃない。そうしてこっちのほうがいいなとなったらば、こっちを買えばいい。
本来の遊び方って、そういうもののはずだから。
こけしの表情に宿る「あまみ」
ある方がね「うちに帰ってこけしの顔を見ると、自分が楽しいときは微笑んでくれ、ブルーな気分のときはこけしもブルーな表情に見えるんですよ」と話してくれたんです。
こけしの顔は同じなんだけど、その時々の見る目によって感情が変わるというか、自分自身の心情が投影されるというのかな。そういう話を忘れないようにしたいなと思っています。
微笑んでいるような、見方によってはちょっと悲しげにも見えるような、そんなこけしの表情を私は「あまみ」と言っています。
50年かけてそんな表情がやっと描けるようになったけれど、こけしの顔はね、まったく同じ顔が描けなくてもいいんです。私だって、まったく同じには描けないですよ。
同じ顔だったら二つ持っていてもしょうがないんじゃない? だから同じようでも違っていていいんだなと。
こけしの代替品ってないからね。人にとっての「癒し」は、最後までなくならないと思うよ。
伝統を伝承するには、時代に合わせた変化が必要
こけしの色使いには伝統があって、昔の色を使わないと展覧会では賞に入らない。ところが昔の色を使うと、年月を経ると色が飛んでしまう。一般の人にとっては色が飛ばないほうがいいのは当然です。
なので、先ほどのお雛様のように金や銀を混ぜた色を使ってみたりと、伝統を守りつつも時代に合わせた変化が必要です。時代に合わせて新しいものを作っていかないと、伝統が続いていかない。
当初は素朴な子供の玩具だったこけしが、売れない時代を経て、美しく作られ大人の観賞用となっていく。もっと綺麗に「まで(美しく)」に作って、観賞用として見て楽しめるようにしたいなと考えた人たちがいたからこそ、今のこけしが残った。売れるか売れないかは別で、時代時代に合わせてね。
最近ではアイスクリームやキノコのような、さまざまなこけしがあります。それはそれでいいんですよ、職人さんが食っていくためには売れるものを作らなくてはいけない。
でも、伝統を守るためにはそういうこととは違う方法もあるのではないか。
私が幸せなのは、こけし作りとは別に飲食店をやっているから、ほかの職人さんがやりたくてもなかなかできないような新しいチャレンジをした作品を作ることができる。それができるのはとても贅沢なことだなと、私は思っています。
土湯こけしを福島市の文化遺産に
ここ3年くらいずっと、土湯こけしを福島市の文化遺産に認定してほしいという活動をしています。昔からの伝統工芸品なのだから、大事にしてほしい。
職人が食っていくためには何でもしなくてはいけないんだけれど、それを対外的に発信していくのは自治体の役目なんですよ。発信したらもっとこけしの需要が増えるかもしれない。増えないかもしれないけど少しは箔がつくんじゃないか、新しい工人さんでもお墨付きが得られるのではないか、そう考えています。
素晴らしいこけしは、お土産として連れて帰ってもらって土湯の外に出て行くものも多いけれど、後世のためにここ土湯に残しておくことも大事。宝ですよ。そうして残してくれる人がいるということも幸せなことなんです。
最近は若手のこけし工人さんも増えているし、来年あたり展覧会をやってもいいのではないかと考えています。
よく、ビエンナーレとかトリエンナーレというでしょう、あんな感じで土湯でできたらいいですね。
こけしは人生
昔は、こけしを削るための専用の刃物も自分で打っていたんですよ。木についても知らなければならないし、削り方も知らなくてはならない。それが一つになって初めて、こけしを作ることができる。
ある名人さんが「この道60年かかってここまで来て、この木を乾かすのに何年、これを作るのに何か月、それほど時間がかかっているのに、これが高いと思いますか?」と。俺はまだそこまで言えない。奥が深いんですよ。
なんでもそうだけど、一歩ずつ、一から二。一から五はない。前のめりに生きたいなと思っています。
——若い頃、もし骨折しなかったら、こけしは作っていなかったかもしれませんか?
いや、骨折しなくても作ったかもしれない。こけしが好きだったんだね。
ふるさと納税・返礼品のお申し込み
名称 | No.2840 土湯こけしのスタンドライト |
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寄付金額 | 224,000円 |
ふるさとチョイス | さとふる | 楽天ふるさと納税 | ふるなび | ANA |
名称 | No.2841 土湯こけしメリーゴーランド |
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寄付金額 | 224,000円 |
ふるさとチョイス | さとふる | 楽天ふるさと納税 | ふるなび | ANA |
名称 | No.2842 土湯こけしのひな人形 |
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寄付金額 | 187,000円 |
ふるさとチョイス | さとふる | 楽天ふるさと納税 | ふるなび | ANA |