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「刀とは、命の輝き」福島で古刀再現に邁進する刀匠・藤安将平さん

福島市のふるさと納税返礼品に「日本刀(御守刀)」が登場

刀匠・藤安将平さん

2023年7月から、福島市のふるさと納税返礼品に「日本刀(御守刀)」が登場します。

日本刀の緊張感ある凜とした佇まいや畏怖を覚えるほどの美しさが好きだという方、また近年、ゲーム「刀剣乱舞」の人気により新たな日本刀のファンが増えており、刀に興味を持っている方も多いのではないでしょうか。

御守刀・五寸五分刀身

静かな波打ち際を思わせる美しい刃文(乱れ刃)

福島市ふるさと納税返礼品の御守刀を制作するのが、福島市の立子山に日本刀の鍛錬場「将平鍛刀場」を構える作刀の第一人者、刀匠・藤安将平(ふじやす まさひら)さんです。
日本刀は鎌倉時代のものが品質や美しさにおいて頂点だといわれており、藤安さんは19歳で刀鍛冶を志して以来56年間、ひたすらに「古刀」の再現に邁進しています。

立子山の日本刀の鍛錬場「将平鍛刀場」

立子山に構える藤安さんの「将平鍛刀場」外観

取材では藤安さんはにこやかに、そして時に熱く、日本刀と日本の「美」について語ってくれました。

人間国宝・宮入昭平(行平)の生き様に魅せられ刀鍛冶に

——高校3年のときに、師匠(人間国宝・宮入昭平 刀匠)の書かれた「刀匠一代」という本に出合ったことで、刀鍛冶になると決めたと伺いました。師匠の作る刀に惹かれたのですか?

その本には刀のことはほとんど出てこなくて、宮入の人生や考えが書かれていました。それを読んで師匠の生き様に魅せられたんですね。そもそも現代に刀工がいるということが驚きでした。
本の中で宮入が「自分の後に続く者に出てきてほしい」と書いていたのを読み「これは俺のことだ!」と。

鍛錬場の藤安さん

とにかく現場を見たいと、福島から師匠の鍛冶場がある長野県に就職し、休みのたびに工房を見に行っていましたね。
しかし痩せて身体も小さかったせいかなかなか弟子入りを許されず、見かねた師匠の奥さんが「自分の仕事の手伝いをさせるから」ということでやっと認められました。
それから自分一人で刀を作らせてもらえるようになるまで、7年かかりました。

「古刀」の再現を目指す厳しい道のり

しかし、ただ現代の美しい刀を作るだけでは非常につまらなかったのです。

日本刀の頂点に位置するのは鎌倉時代に作られた刀だとされていて、その後、それら古刀を超えるものはできていません。
現在、刀用の素材は島根で作られている「玉鋼(たまはがね)」の一種類しかありません。鎌倉時代のような刀を作るには、その頃使われた古い鉄があればいいのではないか。でも、それを使って鍛錬して作っても、同じような刀はできなかったんです。

古刀の再現は、師匠には反対されました。「できっこないし、そんなことをやっても将来食べていけないのは目に見えている」と。でも私は、これまで誰も本気でやってこなかった、古刀を再現する道を選びました。
当時は「やりたい」という気持ちだけで向こう見ずでした。でも後から考えると、この道を進んできて正解だったなと。
ようやく去年あたりから、それらしいものができるようになってきました。50年かかりましたよ。

火床で玉鋼を熱する

本物だけに宿る「美」や「精神性」

——今の時代、実際に日本刀を武器として使うことはできませんが……

もし日本刀が、美術品として傷や欠点がないという「美」だけで存在すればいいのであれば、よけいなことをする必要はないんですよ。玉鋼を使う必要すらないんです。
玉鋼も不足しているなかで、私は古刀を再現するために奈良時代の遺跡から発掘した炉を再現して、砂鉄から鋼を作ることもしています。
そこまでしないと、ものの本質は見えてこない。ごまかしや嘘からは見えてこないんです。

島根で作られている「玉鋼(たまはがね)」

ずしりと重い「玉鋼(たまはがね)」。現在、刀用の素材は島根で作られている玉鋼の一種類しかない

刀を刀たらしめる要素は3つあります。まず「武器」としての実用性、「美しさ」、そして最も大事なものが「精神」です。
古来より日本人は、刀を特別なものとして扱ってきました。刀を帯びる、また側に置くことで、大きな力で守られているという考えが昔からある。誇りであり、気高さの象徴です。そのために、刀は武器であるにもかかわらず、必要以上に美しい研磨がなされているんです。

刀に興味を持って、刀を勉強すると、これまで見えなかったいろんなものが見え、感じられるようになってきますよ。
最終的に目指すのは「美」なんです。

刀とは、命の輝き

——先生のところには女性のお弟子さんもいると伺いました。私は当初、女性が鍛冶場に入ってはいけないのではないかと思っていました。

よくある話ですね(笑) なぜ鍛冶場にしめ縄が張ってあるのか、わかりますか?
日本刀は「命」だからです。鍛冶場は命の誕生の場であり、仕事場そのものが「女性」なんです。

火を熾すところを「火床(ほど)」と言いますが、本来は「ほと」、古い言葉で女性器を表すんです(※1)。すなわち、命の誕生の場に立ち合っているということなんですよ。
日本の最高神は天照大神、女性の神様ですよね。あらゆる命の源は女性なんです。

火を熾す「火床(ほど)」

火を熾す「火床(ほど)」。燃やしているのは松炭で、こちらも大変貴重で入手困難。

四季の移ろい、限りある命、美しい国土が育んだ美意識。
日本人の美意識とは、そして刀とは、命の輝きなんですよ。

日本刀の本質を、次の世代に伝えたい

——刀を作る人だけでなく、刀を所有する人や見る人も、そのような精神性や「日本の美」を理解できるようになりますか?

なります。
刀を学んでいると、ものの善し悪しの本質が見えてくるんです、見る目が育ってきます。

弟子に刀作りの技を伝える

私は勉強が大嫌いでしたが、刀鍛冶になってから日本の歴史や美意識を学びました。
そういうことを次の世代に伝えていかないといけないんです。そうしなれば、刀がなくなってしまいます。

刀鍛冶として生かされ、刀のおかげで恩恵を受けている以上、一人でも多くの人に本質を伝えていかなくてはいけない。日本刀の講座を行ったり、奉納鍛錬などをするのもそのためです。
これまでに熱田神宮や鹿島神宮、伊勢市での奉納鍛錬をはじめ、織田信長ゆかりの幻の名刀を再現し建勲神社(たけいさおじんじゃ)に奉納するなど行ってきました。

「刀剣乱舞」ファンに見る、新しい時代の予感

建勲神社は、織田信長公を祀っている神社です。本能寺の変で信長が自刃したとき「薬研藤四郎(やげんとうしろう)」という短刀が使われたと伝わっています。その刀は消息不明で現存しないのですが、ある方が建勲神社に信長公にまつわるものを奉納したいということで、私が再現を依頼されました。

この薬研藤四郎は「刀剣乱舞」というゲームのキャラクターモチーフになっている刀なんですね。
現存しないことがわかっていたところに、それが再現されて奉納されるということで、全国から多くの刀剣ファンの女性たちが集まってくれました。国内だけでなく、アメリカ、台湾、カナダ、韓国からも。
建勲神社:”薬研藤四郎”再現刀の奉納及び公開(平成30年)

「薬研藤四郎」を奉納したのは2018年7月ですが、この年の1月に、京都市の藤森神社にご縁のあった御物の「鶴丸国永(つるまるくになが)」の写しを奉納しています。このときも刀剣乱舞によって鶴丸を好んでいた方々が「せめて写しでも見ることができれば」と、早朝から大勢、全国各地から集まってくれました。嬉しいですね。

熱した玉鋼

今までの刀剣界は、愛刀家というよりは投資対象として刀を求める人が多かった。でも今の女性たちはそうではない。刀を「お迎えする」と言ってくれるんです。それは本質的なものの見方を、知らず知らずのうちに理解しているということです。

どこから入ってきてもいいんですよ。ゲームの世界から刀剣界に入ってきた女性たちが、徐々に本物になりつつあるんです。
これから刀剣界は変わりますよ! 楽しみです。

返礼品のさらなる進化に期待

——去年、ようやく古刀に近づいてきたというお話がありました。返礼品が完成するまでに約1年ということですが、その頃にはさらに進化したものがお手元に届くということですよね。

当然そうなります。
今回の返礼品は、寸法と刃文の種類という大まかなオーダーしかいただかないことになっています。ある程度こちらの自由に作刀させていただけるのはありがたく、古刀再現の研究の一環として、その進化を楽しみにしていただきたいですね。

昔は、子供が生まれたお七夜のときに「御守刀」を授けることが行われていました。
今回は、八寸三分の大ぶりの刀と、五寸五分の小ぶりの刀の2種類をお作りしますが、どちらもその人の御守刀として持っていただければと思っています。

藤安将平さんと、お弟子さん

※1:日本神話で、イザナミが火の神であるカグツチを生む話のなかで「ホト」という言葉が使われています。
また古事記には「美蕃登(みほと)」と書かれており、「ほと」とは「火処(ほと)」= 火の出る所からきているといわれています。

ふるさと納税・返礼品のお申し込み

1. 将平鍛刀場 御守刀 短刀/五寸五分

御守刀・五寸五分刀身

御守刀・桐箱
御守刀・桐箱
寄付金額 4,500,000円
サイズ 刀剣(白鞘に収めた状態):約32cm
桐箱(紐の厚み込み):約35.5cm×8.5cm×11cm
 規格 【重さ】
刀剣(白鞘に収めた状態):約160g 全体(桐箱に収めた状態):約650g

【素材】
刀剣:玉鋼 鎺(はばき):金銅 白鞘:朴材 刀袋:会津木綿

【刃文】
直刃/乱刃
ご希望の場合、どちらかお選びいただけます。ご希望がない場合は、乱刃で作刀させていただきます。

【付属品】
鎺、白鞘、刀袋、桐箱、銃砲刀剣類登録証、所有者変更届出書類

ふるさとチョイス 楽天ふるさと納税

2. 将平鍛刀場 御守刀 短刀/八寸三分

御守刀・八寸三分刀身

御守刀・桐箱
御守刀・桐箱中
寄付金額 5,600,000円
サイズ 刀剣(白鞘に収めた状態):約40cm
桐箱(紐の厚み込み):約47cm×8.5cm×11cm
 規格 【重さ】
刀剣(白鞘に収めた状態):約360g 全体(桐箱に収めた状態):約950g

【素材】
刀剣:玉鋼 鎺:金銅 白鞘:朴材 刀袋:会津木綿

【刃文】
直刃/乱刃
ご希望の場合、どちらかお選びいただけます。ご希望がない場合は、乱刃で作刀させていただきます。

【付属品】
鎺、白鞘、刀袋、桐箱、銃砲刀剣類登録証、所有者変更届出書類

ふるさとチョイス 楽天ふるさと納税

 

取材を終えて

「古刀の再現を目指して、気づいたらここまで来ていました。晩年は一人でも……と思っていましたが、周りにこんなに多くの人が来てくれて。
自分はこの道に邁進するように運命づけられたんだなと。あとはバトンタッチの瞬間まで、全速前進です」

日本刀という「日本の美」の本質を追い求めてきた、藤安さんの熱い想いがあふれるインタビューでした。
私も美しい刃文など刃物に興味がありましたが、実際に鍛冶場を見学したのは初めてで、松炭の美しい炎や照柿色に焼けた玉鋼などに見とれていました。

今後は鍛錬場の見学の受け入れも行っていく予定とのことです。
見学受け入れや講習会などのイベント情報は、Twitterやホームページでご確認ください。

藤安将平プロフィール
1946年(昭和21年)福島県伊達郡川俣町に生まれ、5歳の頃に福島市に移る。福島県立福島工業高等学校精密機械科を卒業。
1966年(昭和41年)2月17日に長野県坂城町、宮入昭平に入門
1972年(昭和47年)文化庁の承認を受け、初作の太刀が第8回新作名刀展で努力賞を受賞。
1975年(昭和50年)6月1日、福島市立子山に鍛刀場を構え、火入れ式を行い独立。
2003年(平成15年)福島県文化財センター「まほろん」にて吉田秀亨と協力し、古代製鉄炉の復元実験操業を行う。以降平成17年、平成19年と続く。
2018年(平成30年)1月、京都府京都市藤森神社に太刀「御物鶴丸国永写し」を奉納。同神社境内にて公開奉納鍛錬を行う。7月には京都府京都市建勲神社に短刀「薬研藤四郎再現刀」を奉納。同年10月に一般公開され、公開に併せて10日間境内にて講話を行う。
2020年(令和2年)福島県郡山市のカメラマン赤沼博志と共著、髙山武士(雪山)総監修の書籍「孤高の鎚音」を出版。
独立以後、鹿島神宮、護国神社、熱田神宮、靖国神社など多くの神社で奉納鍛錬や公開鍛錬、また太刀などの奉納を行い、現在も続いている。

将平鍛刀場 詳細情報

住所 福島県 福島市立子山字溜井下2-12
HP・SNS

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Instagram
ECサイト

村上瑞恵

レギュラーライター /編集・ SNS担当

村上瑞恵

地に足のついた生活がしたいと、2006年に都内から福島県にIターン。パソコン通信時代からのPCユーザーで、サイト運営やSNS運用などデジタル方面にわりと強いガジェットおたく。地域のICT化推進事業に携わったのち、Web制作会社で観光情報サイトの編集やSNSを活用した販売促進・ファンづくりを担当し、2022年9月に独立。休みの日はカメラ片手にバイクや車で出かけている。

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